一日一言「『義』と『恩』」
十一月十二日 「義」と「恩」
生きることを考えないことが勇気がある者と思うのは、生きることも勇気もわかっていないからである。生きるということは重いものと思わなければならない。しかし、生きることより大切なことは、義と恩である。義を尽くすことや人の恩にくらべれば、生きることはやさしい。義でも恩でもないことに命を投げうつことは、狂犬病にかかった犬のすることに等しい。
恩のため捨つる命はかるからず
外のことには命捨つるな
松陰先生、かく語りき。
死して不朽の見込みあらばいつでも死ぬべし
生きて大業の見込みあらばいつでも生くべし
「義を見てせざるは勇なきなり」は、真にわれわれ道徳上の臆病者を奮起せしめるに足る名言だが、同時にしばしば濫用されて軽挙妄動のキッカケになる言葉でもある。要は眼前の事柄が義なりや否やの判断である。
── 穂積重遠(『新訳論語』)
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