2019-01-25 一日一言「雲は一時」 一月二十五日 雲は一時 延喜元年(西暦九〇一年)の今日は、菅原道真がおとしいれられた日である。昨日まで飛ぶ鳥も落とさんという勢いであった道真公も、一瞬にして日陰の人になった。けれども雲は永久に月を隠すものではない。それは、月が俗世間に固執しないためである。ひとときの雲に隠れ、都を去ったとしても、分かれて都に残るものの心には、愛は遺(のこ)るものである。 東風(こち)ふかば匂ひおこせよ梅の花 あるじなしとて春な忘れそ 君が住む宿の梢をゆくゆくも かくるるまでに顧みしはや<菅原道真> ── 新渡戸稲造(『一日一言』)