一日一言「意志が人を変える」
十二月二十八日 意志が人を変える
これは遺伝的なものだとか、持って生まれた先天的なものだから、しかたがないと考えて、自分の弱いところを自らがゆるし、これを他人にもゆるしを乞う者がいる。だが、これほど祖先に対し不幸で、自分に対して忠義に反することはない。祖先が悪いところを残していったならば、必ずこれをなおす力も残していっているはずである。自分にまごころがある者は欠点をあらためるように努力するものである。
短気なは生まれつきぢやと思ふのは
よつぽど我が身勝手了簡
でで虫のちつくり角を持つ故に
早や争ひのはしとなりけ
露伴先生、かく語りき。
運命が善いの悪いのといって、女々しい泣言をならべつつ他人の同情を買わんとするが如き形迹(けいせき)を示す者は庸劣凡下(ようれつぼんげ)の徒の事である。いやしくも英雄豪傑の気象あり、豪傑の骨頭あるものは、「大丈夫命造るべし、命を言うべからず」と豪語して、自ら大斧の揮(ふる)い巨鑿(のみ)を使って、我が運命を刻み出して然るべきなのである。
アンゴ先生、かく語りき。
すべて人間世界に於ては、物は在るのではなく、つくるものだ。私はそう信じています。だから私は現実に絶望しても、生きて行くことに絶望しない。本能は悲しいものですよ。どうすることも出来ない物、不変なもの、絶対のもの、身に負うたこの重さ、こんなイヤなものはないよ。だが、モラルも、感情も、これは人工的なものですよ。つくりうるものです。だから、人間の生活は、本能もひっくるめて、つくることが出来ます。
── 坂口安吾(『余はベンメイす』)