NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

十三夜

『月夜のプロージット』

 時計が十一時を打った時 おとぎばなしの本をよんでいた男が 思い出したように立ち上がって 窓を開けた そしてそこに青い光がいっぱい降っているのを見ると半身をつき出しながらどなった
 「おいやろうぜ」
 すると隣の窓から返事がした
 「OK!」
 やがて青い電気に照らされた舞台のように青いバルコニーに 円テーブルが持ち出された 二つの影がそのまわりに立って 互いに差し上げた片手の先でカチッと音をさせた
 A votre santé!
 双方のグラスには いつのまにか水のようなものがはいっていた それを一息に呑むと 一方が云った
 「だんだんうまくなるじゃないか」
 他方が答えた
 「そうさ 十三夜だもの」


そうさ、十三夜だもの。

 ではグッドナイト! お寝みなさい 今晩のあなたの夢はきっといつもと違うでしょう

── 稲垣足穂『一千一秒物語』


一千一秒物語』(松岡正剛の千夜千冊) http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0879.html

一千一秒物語

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第三半球物語

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