NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

一日一言「死は待つもの」

六月十七日 死は待つもの


 ぼんやりと考えていればこれほど恐ろしいものはないが、よくよく考えてみれば、これほど切ないものはないと思うのは、死である。深く考えれば鬼のようであるが、さらに深く考えてみると、これは天の使いではなかろうか。そうであれば、死はいつ来てもよいように、これを待たなければならないが、自分から死を迎えてはならない。


  かほどまで偽多き世なれども
      死ぬるばかりは偽でなし

── 新渡戸稲造(『一日一言』)


安吾センセに曰く、

 死ぬ時は、たゞ無に帰するのみであるという、このツツマシイ人間のまことの義務に忠実でなければならぬ。私は、これを、人間の義務とみるのである。生きているだけが、人間で、あとは、たゞ白骨、否、無である。そして、ただ、生きることのみを知ることによって、正義、真実が、生れる。生と死を論ずる宗教だの哲学などに、正義も、真理もありはせぬ。あれは、オモチャだ。

── 坂口安吾『不良少年とキリスト』