NAKAMOTO PERSONAL

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一日一言「克己復礼」

五月十六日 克己復礼


 寛政四年(西暦一七九二年)の今日は、林子平が禁固に処せられた日で、その彼の言葉に次のようなものがある。

 克己とは「己」に勝つということである。己とは私欲のかたまりであり、自分勝手なことをするのはすべてそのせいである。この己を除くのが克己である。復礼とは、その欲に勝って道と義にかなうことを行うべきである。世の中には、礼にかなうものとそうでないものがあり、いちいち顧みるべきである。みだりに怒ってしまうようなときなどに、これはどうしてかと顧みるならば、そのれは自分のわがままから生じる病のようなものであり、一度顧みることでたちまち消散するはずである。もっとも、それには強い精神力を必要とする。


  堪忍と聞けば易きに似たれども己に勝つ替へ名なるべし 〈林子平

── 新渡戸稲造(『一日一言』)