一日一言「人に頼るのは卑劣」

五月十二日　人に頼るのは卑劣

　人を信じることは良いことだが、人を頼ることは卑しいことである。また、他人と計画を立てることは良いが、人の力を借りて自分の手柄にしようとするのは失敗のもととなる。頼ってばかりいる者は、だれも一緒に計画を立ててはくれず、かえって除け者にされる。

　　鳥さへも己が塒（ねぐら）の木を撰む
　　　　　　ただしからざる人に頼らめや

　　橋なうて雲の空へは登るとも
　　　　　　人の力は頼まれはせず

──　新渡戸稲造『一日一言』

ぼくの最も尊敬する学者の一人、インド哲学者の中村元さんは言います。

この変転　常ない世の中では
まず自分に頼るべきである
自分に頼るということはどういうことであるか
自分はこの場合にどうすべきかということを
その場合その場合に考えることでしょう
その場合　何を判断決定の基準にするのか
それは「人間としての道」「法（のり）」
インドの言葉で言うと「ダルマ」と呼ばれるものです
これを「法（ほう）」と訳しますが
この人間の理法というもの　これに頼ること
「自己に頼れ　法に頼れ」これが　釈尊の最後の教えでありました

──　中村元（『ＮＨＫ映像ファイル　あの人に会いたい』）より

『2005年11月05日(Sat) 「中村元」の世界』　http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20051105　
『公益財団法人中村元東方研究所』　http://www.toho.or.jp/