NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

昭和の日

「日本の昭和の半世紀というものは、変化のすさまじさという点で、人類史上、どの人類も経験しなかったものではないか」

── 司馬遼太郎(『街道をゆく』)



昭和の日。
「激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす」日。


「【主張】昭和の日 時代の意義を伝え続けよ」(産経新聞
 → http://www.sankei.com/column/news/180429/clm1804290002-n1.html

 「ああ昭和食えない食える食い飽きる」。平成17年の本紙「テーマ川柳」欄に載った句で、昭和時代における国民の食生活の激変ぶりを、動詞の活用をなぞるような形で見事に捉えている。

 ことほどさように昭和は、歴史上まれにみる激動の連続だった。これほど明確に印象づけられた時代がかつてあったろうか。

 昭和の幕開け早々には世界恐慌に直撃され、やがて戦時色を強めながら先の大戦へと突入し、敗戦に至る。直後の荒廃と窮乏からみるみる復興を果たすと、高度経済成長によって世界有数の経済大国へと発展した。「昭和元禄」の呼び名に象徴されるような平和と繁栄を享受したのである。

 昭和天皇崩御で平成を迎え、30年がたった。昭和以前の生まれはおよそ4人に3人となったが、その人たちが今でも特別の感慨をもって昭和時代を語るのは、戦争による甚大な犠牲や戦後の国民の努力が現在の日本の礎となっているからに違いない。

 「昭和の日」には、あらためてそのことを深く胸に刻みたい。

 一方で、昭和が遠ざかっていく寂しさを感じることも多いのではなかろうか。来年4月30日の天皇陛下の譲位に続き、5月1日には皇太子さまが即位され、平成に代わる新しい元号が始まる。昭和への郷愁がいやがうえにも増し、あの時代の空気を今一度吸ってみたいとの思いにも駆られよう。

 町の路地には子供らの遊ぶ声が響き、ときに近所のおじさんの厳しくも優しい一喝が交じったりした。漫画のサザエさんの世界のように近隣が助け合い、地域で子供を見守る温かさがあった。家庭内では、ちゃぶ台を囲んでの団欒(だんらん)の光景がごく普通にみられた。

 たとえ時代が移り、生活スタイルが変わろうとも、昭和時代の温(ぬく)もりは懐古や郷愁を超えていつまでも大切にしたいものである。

 戦後の復興、高度成長とともに歩んできた団塊の世代の誰もがまもなく70歳代となり、新しい元号の時代は彼らの孫の世代も加わって創造していくことになる。

 物心ともに豊かな日本であり続けたいと、夢や期待が日一日と膨らむこの頃である。そんな次代への教訓とするためにも激動の昭和を生きた人たちはぜひ、昭和という時代の匂いや悲喜こもごもの経験、さまざまな意義を、後の世代に伝え続けてほしい。


『昭和の日 オフィシャルサイト』  http://www.429jp.info/
『昭和の日 - Wikipedia』 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%AD%E5%92%8C%E3%81%AE%E6%97%A5

「昭和」という国家 (NHKブックス)

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街道をゆく (8) (朝日文芸文庫)

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