NAKAMOTO PERSONAL

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世界の偉人に学ぶ「言葉の力」

「世界の偉人に学ぶ『言葉の力』 変化を起こす話術とは」(フォーブスジャパン)
 → https://forbesjapan.com/articles/detail/19537/1/1/1

映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』が話題を呼び続けている。

ナチス・ドイツに対抗するため英国人を結束させたチャーチル元英首相を演じたゲイリー・オールドマンは、ゴールデン・グローブ賞放送映画批評家協会賞の両方でドラマ部門主演男優賞を受賞した。

製作元のフォーカス・フィーチャーズ(Focus Features)は先日、同作に絡め、人々の心を動かす力強い言葉で運動を巻き起こし、変革をもたらした世界の指導者たちを紹介した短編映像を公開した。

こうした映像に必ず登場するのが、マーティン・ルーサー・キング牧師だ。映像では彼のこんな言葉が紹介されている。「ある場所での不正義は、あらゆる場所での正義に対する脅威だ」

これはキングが1963年4月、アラバマ州バーミングハムで公民権運動の抗議活動を率い逮捕された際に記した「バーミングハム刑務所からの手紙」からの一文だ。この手紙は、彼の類まれなる言葉の力を示している。

この一文が現在まで語り継がれている理由の一つは、その構造にある。この文は、対立する概念を並行して配置する「対句法」を用いている。キングは、言葉の響きと構造を利用して自分の考えを広める方法を熟知していた。

キングの天才的な言葉の力は、20世紀を代表する演説の一つである「私には夢がある」スピーチで存分に発揮されている。驚くことに、キングはこのフレーズを即興で使った。この言葉は、報道機関に配布された原稿には含まれていなかった。

このような離れ業をやってのけるに必要なスキルを考えてみてほしい。ジョージ・ワシントンの退任演説やエーブラハム・リンカーンのゲティズバーグ演説、チャーチルの「私たちは戦う」演説、ジョン・F・ケネディの大統領就任演説など、有名な演説の多くは、原稿を徹底的に推敲(すいこう)したものだ。

キングは、真に並外れた偉業を成し遂げた。彼は、語りかける聴衆の感情を理解していた。25万人の聴衆を前に原稿から外れて、より少ない聴衆を相手に試したことのあるアイデアを実行すると決め、完璧にそれをこなした。


偉大なリーダーは言葉を学ぶ

コミュニケーションの達人は、自分の前に存在したコミュニケーションの達人から影響を受けている。キング、ケネディチャーチルリンカーンといった人々は全て、言葉とリーダーシップを他者から学んでいた。

例えばキングは、フォーカス・フィーチャーズの短編映像にも登場したアフリカ系米国人の米植物学者、ジョージ・ワシントンカーバーの言葉を研究したほか、公民権運動の指導者ベンジャミン・メイズからも影響を受けた。メイズはキングが通ったモアハウス大学の学長で、学生たちに毎週、示唆にあふれた説教をしていた。

キングはメイズの説教から、演説の中に歴史上の言葉や事実を織り交ぜることを学んだ。他の偉大な演説家の多くと同様に熱心な読書家だったキングの演説には、ソローやトルストイロングフェローエマソンの言葉が引用されていた。

「リーダーシップと学びは、互いに欠くことができないものだ」と述べたのは、ジョン・F・ケネディだ。彼も、執筆・演説の学習を常に怠らなかった。チャーチルを敬愛していたケネディは、その言葉遣いを細部まで研究した。ケネディチャーチルについて「彼の言葉のまばゆい光が、英国民の勇気を奮い起こした」と語っている。

少年時代のケネディは病弱で、病院で過ごす時期が長かった。あるとき見舞いに訪れた家族の友人は、まだ10代の彼がチャーチルの第1次世界大戦回顧録を読んでいるのを見て驚いたとされる。ケネディは、チャーチルの演説の「魅力にとりつかれていた」と言われている。

フォーカス・フィーチャーズの特集短編映像では、フランクリン・ルーズベルトの妻、エレノア夫人の次のような言葉も紹介されている。「良いリーダーは、自分たちのリーダーに信頼を置くよう人々を触発する。偉大なリーダーは、自分たちに自信を持つよう人々を触発する」

この名言は、リーダーが言葉を慎重に選ばなければならないことを改めて思い出させてくれる。言葉は人を傷つけることもできるし、癒やすこともできる。憎悪を燃え上がらせることもできるし、士気を高めることもできる。賢く言葉を使えば、他者の最も良い面を引き出すことができる。

ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』 http://www.churchill-movie.jp