名著『代表的日本人』
「【産経抄】名著『代表的日本人』を忘れるわけにはいかない 1月4日」(産経新聞)
→ http://www.sankei.com/column/news/180104/clm1801040002-n1.html
元日のコラムで、明治の知識人の発信力について書いた。ならば新渡戸稲造の『武士道』と並んで、明治時代の日本人が英語で執筆した歴史的名著、『代表的日本人』を忘れるわけにはいかない。
日本でもっとも尊敬する政治家は誰か。かつてケネディ米大統領が日本人記者団から問われて、「上杉鷹山(ようざん)」と答えた。どうやらこの本で鷹山を知ったらしい。「発信力」という点では折り紙付きである。作者の内村鑑三は、そのほかに西郷隆盛、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮上人を取り上げている。
今年のNHK大河ドラマの主人公となる西郷については、「新日本の創設者」と位置づける。西郷なくして維新革命は不可能だったという。明治の日本に与えた影響力は、西南戦争で敗れた後も衰えることはなかった。「新政府は西郷を殺してしまった。私はこの負い目が為政者の道徳的堕落を防いだと思います」。第33回正論大賞を受賞した文芸批評家の新保祐司氏は、渡辺利夫氏との対談で語っていた。卓見だと感心する。
「とにかく国家の名誉が損なわれるならば、たとえ国家の存在が危うくなろうとも、政府は正義と大義の道にしたがうのが明らかな本務である」。内村は、こんな西郷の言葉を引用している。
普通に暮らす日本人が、北朝鮮の工作員によって拉致される。まさに国家の名誉が損なわれた、卑劣な事件だった。被害者が北朝鮮にいることがわかってから何十年もたつというのに、いまだ救出には至っていない。
「怒りや悲しみはとうの昔に過ぎ去り、今はただただ、不思議に思うばかりです」。横田めぐみさんの母、早紀江さんは日本政府に問いかける。本務を果たしているのか、と。西郷の怒る顔が目に浮かぶ。
西郷の偉大さはクロムウェルに似ていて、ただピューリタニズムがないためにピューリタンといえないにすぎないと思われます。西郷には、純粋の意思力との関係が深く、道徳的な偉大さがあります。それは最高の偉大さであります。西郷は、自国を健全な道徳的基盤のうえに築こうとし、その試みは一部成功をみたのであります。
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