NAKAMOTO PERSONAL

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国難乗り越えた先人に学ぶ

「【主張】明治150年 『独立自尊』を想起したい 国難乗り越えた先人に学ぼう」(産経新聞
 → http://www.sankei.com/column/news/180103/clm1801030001-n1.html

 明治の改元から今年は150年となる。日本が進むべき道を、先人の足跡に見いだしたい。

 異国の船が日本に押し寄せた幕末と現代は、よく似ている。

 開国を求めて横浜沖に船を泊めた米国のペリー艦隊は、母国の記念日に100発以上の祝砲を放った。砲艦外交にほかならない。攘夷(じょうい)の機運が高まり、薩摩藩と英国艦隊の薩英戦争などが起こって外国の砲弾が国土を撃った。

 現代、中国の公船が尖閣諸島周辺に押し寄せている。北朝鮮のミサイルがわが国の上空を飛び、あるいは日本海に落下している。


 ≪外圧にどう向き合った≫

 今年も北朝鮮と中国の脅威は増すことになろう。日本にかかる、あからさまな外圧には、幕末と現代に共通するところがある。国難に向き合い、明治人は何を目指したかを改めて学ぶべきだ。

 「今の日本国人を文明に進(すすむ)るは、この国の独立を保たんがためのみ」

 この時代の教育や言論の分野で指導的役割を果たした福沢諭吉が、明治8年の「文明論之概略」で記した。西洋文明も完全ではないが、遅れている日本は西洋に制されてしまう、という危機感をあらわにしている。

 追いつこう。がんばろう。小さい体で、額に汗を浮かべながら、明治人は刻苦勉励したのだろう。あらゆる分野で「西洋」をひたむきに学んだ。

 富国強兵策は、このような文脈で理解されるべきである。国の独立を保つために、ひた走った先人の姿を思い浮かべたい。

 国力は増し、日本は植民地にならずにすんだ。日清、日露という2つの戦争を明治人は戦った。2つとも、日本の国防にとって要衝の地となる朝鮮半島の安定化を目指すものだった。戦ってでも、日本の独立を守ろうとした。

 明治150年にちなむさまざまな展示会やイベントが、各地で持たれている。それらに足を運んでみるのもいい。明治人の書き残した言葉を読むのもよかろう。

 単なる回顧ではなく、先人の精神のなにがしかを学びたい。

 近代日本を独り立ちさせるために尽くす心根が、さまざまな事跡や文章から読み取れるだろう。

 明治がひとくくりに栄光の時代だったわけではない。急激な近代化により、伝統や環境の破壊が激しくなった時代でもある。

 急速な、ときには皮相な西洋化が進むなかで、明治の半ばには日本人のアイデンティティーを探そうとする人たちが現れた。


 ≪血潮は継承されている≫

 陸羯南(くが・かつなん)は、明治22年に新聞「日本」の発行を始めた。創刊の辞では、自らの根拠をなくし、西洋に帰化しようとしているかのような日本人を厳しく戒めている。

 「一個人と一国民とに論なくいやしくも自立の資を備うる者は、必ず毅然(きぜん)侵すべからざるの本領を保つを要す」

 陸のいう個人の自立と福沢のいう国家の独立は、同じものといってよい。福沢は「学問のすゝめ」で、「国中の人民に独立の気力なきときは一国独立の権義を伸ぶること能(あた)わず」といっている。

 明治人は個人と国家の独立自尊を求めた。先人が残した誇るべき財産である。ひるがえって現代はどうか。

 最高法規である憲法について考えてみたい。

 占領下、連合国軍総司令部のスタッフが大急ぎで草案を作った憲法は、国権の発動である戦争を放棄し、交戦権を認めていない。国家の権利の制限である。

 日本人は平和を誠実に希求しており、およそ戦争を求める日本人はいまい。だが、権利を制限される形で制定された憲法をいつまでも頂くことが、独立国といえるだろうか。

 国の守りについて、手足をしばっているのは専守防衛という考え方だ。抑止力の一環である敵基地攻撃能力の保有について、正面から継続的に語り合う姿を見ることはない。拉致被害者を自力で救出する手段はないのに、ならばどうするという議論は起きない。

 とうに改正されてしかるべき憲法だが、現政権の下でようやく議論は緒に就いた。これを加速させたい。

 国難に毅然として立ち向かった明治人の血潮は、現在の日本人にも流れている。現代の国難を乗り越えるため、明治人が見せた気概こそ必要ではないか。


かつて目指した坂の上の一朶の白い雲を見つめて...。

 楽天家たちは、そのような時代人としての体質で、前をのみ見つめながら歩く。
 のぼってゆく坂の上の青い天にもし一朶(いちだ)の白い雲がかがやいているとすれば、それのみをみつめて坂をのぼってゆくであろう。

── 司馬遼太郎『坂の上の雲』

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