NAKAMOTO PERSONAL

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「地球平面説」、信奉者が増加中か

「『地球平面説』、信奉者が増加中か」(財経新聞
 → http://www.zaikei.co.jp/article/20171028/408359.html

あるAnonymous Coward曰く、 今年2月、米プロバスケットボールリーグNBAに所属するカイリー・アービング選手が「地球は平ら」と発言したことが話題になった(NBA Japan)。また、ラッパーのB.o.Bは地球が平らであることを確認するために人工衛星を打ち上げる、として先月からGoFundMeで100万ドルの寄付を募っている(The Verge)。その後アービング選手は地球が平らなことを信じていないと釈明しているが(The Ringer)、これ以外にも地球が丸いことを信じていない人は今でも少なくないという。

 こういった炎上・売名・詐欺狙いの発言は一定数あると思われるが、特にイスラム圏で地球平面説を公然と提唱するケースが相次いでいる。

 チュニジアでは、博士課程の学生が5年をかけて書き上げた地球平面説の博士論文を提出し、2つの査読のうち1つをパスしていたが、幸運にもこの件がチュニジア天文学会の前会長に漏れたため、すんでのところで博士号授与が見送られた。彼女の指導教官だった教授がこの件に関与していることは明らかで、問題は根深い(GULF NEWS)。

 また、トルコのエルドアン大統領を支持する右派政党の青年部代表トルゲイ・デミルは、今年の9月1日に地球平面説を党の公式サイトに掲載した(AL-MONITOR)。

 彼らの主張によると、NASAの写真は切れ目の部分が不自然に加工されており、背後にはフリーメイソンの暗躍があるという。

 インドネシアでは、インドネシア国立航空宇宙研究所(LAPAN)の所長が自ら球体説についての講義を行う事態となったが(講義動画その続き)、それでも収まらずに地球平面説信奉者が研究所や職員のSNSに半年以上粘着行為をして「占拠状態」だという(Straits Times)。

 余談だが、日本や欧米では中世ヨーロッパの「地球平面説という神話」がはびこっているが、コロンブスの頃でも現代と変わらず球体説が常識だった。キリスト教世界においてもローマ法王が地球儀を設計したりしたほか、ザビエルが日本に大地球体説を伝えたのもガリレオ裁判より1世紀早い。革新的だったのはアリスタルコス・コペルニクスの地動説であるが、両者は混同されてしまっている。

 少なくとも日本の庶民階級は江戸時代でも球体説に馴染みがなく、戦国時代の宣教師は長崎でサクロボスコの天球論(天動説+球体説)の講義をしていたのが明らかになっている(平岡隆二著:ゴメス「天球論」の成立と構成)。

奇妙な論理〈1〉―だまされやすさの研究 (ハヤカワ文庫NF)

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奇妙な論理〈2〉なぜニセ科学に惹かれるのか (ハヤカワ文庫NF)

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 信じやすい人というのは、奇妙なことがらを信じることに無上の喜びを見出すものだ。しかも、奇妙であればあるほど受け入れやすいときている。ところがそういう人は、平明でいかにもありそうなことがらは重んじようとしない。というのもそんなものは誰でも信じることが出来るからだ。

── サミュエル・バトラー(『人さまざま』)

カール・セーガン 科学と悪霊を語る

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