NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

『君主論』

「理想主義ではなく現実主義であれ。哲学者マキャベリから我々が学べること」(ライフハッカー
 → https://www.lifehacker.jp/2017/11/171103-deal-with-the-real-world-not-the-ideal-world.html

ルネサンス時代の哲学者、ニッコロ・マキャベリは、著書『君主論』において、こんな言葉を残しています。

理想を追いかけて現実に目を向けない者は、長続きせず、やがて滅びるだろう。

意味

マキャベリは、『君主論』において、権力を行使・維持するための容赦のない実際的なアプローチをすすめています。一見道徳に反する行為も、国の大義のためにはやむを得ずというスタンスです。上で引用した文は、同書の中盤に登場し、さらに有名なマキャベリの教訓の基礎を成しています。

彼のもっとも有名な格言は、「愛されるより恐れられろ」でしょう。なぜ、恐れられる必要があるのでしょうか。完全に理想的な世界なら、誰もがお互いに善意を尽くして生きられるでしょう。でも現実は違います。人々は、ネガティブな結果を恐れない限り、他者をおとしいれようとするのです。その意味で、恐怖は、殺人からマナー違反にいたるさまざまな反社会的行動の抑止力になります。

たとえあなたが純粋に無私を貫いたとしても、どこかで私欲のある人に騙され、ズタズタにされるのがオチです。そうなると、あなたに依存している人々まで傷つくことになります。自分自身が素晴らしい人生を送ると同時に、守りたい人がいるなら、自力で何とかしなければならないのです。そのためには、冷酷にならなければならないときだってある。そうマキャベリは言いたかったのではないでしょうか。


得られる教訓

マキャベリの真意については、学者の間でも意見が分かれています。本気だったという意見があれば、独裁を風刺あるいは妨害していた、または支配者の非道徳的行為をあらわにすることで抑圧された人々を扇動していたとする見解もあります。いずれにしても彼のアドバイスは、理想主義ではなく現実主義であれという意味で正しいといえるでしょう。リアルワールドで先に進むには、理想ではなくありのままの現実に目を向けなければならないのです。

たとえば職探し。すべての仕事は最適な志願者のもとに渡り、履歴書があなたの価値を証明してくれると思いたい気持ちはわかります。でも現実には誰かの推薦でもない限り、あなたの履歴書など読まれないことだってあるのです。不公平だとわめくのか、友達の友達を見つけて何とか面接にこぎつけるのか。どっちのほうが仕事を得られると思いますか?

いえ、理不尽なことに声を上げるのが無駄だと言っているのではありません。ただ、労働者の権利と呼ばれるもののほとんどは、労働組合や活動家が戦って勝ち取ったもの。上司らが善意で歩み寄って権利を差し伸べてくれたのではなく、労働者が手を組み、要求をのむまで働かないと主張したため、政治家が対応せざるを得なかったのです。

世の不条理を受け入れることは、失意と疲労をもたらすかもしれません。でも、「こうあるべき」という理由だけで物事が動くのをのんきに待つのは、もっと疲れます。なぜならこの世のほとんどのことは、あるべき通りには動かないから。それを変えるための時間など、我々にはほとんどありません。ですから、理想の世界への希望は捨てずに、それでも物事を前に進めるための、バランスを見つけることが重要なのです。

君主論 (岩波文庫)

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きびしい社会を生き抜く人になる! こども君主論

きびしい社会を生き抜く人になる! こども君主論

 わたしがここに書く目的が、このようなことに関心をもち理解したいと思う人にとって、実際に役立つものを書くことにある以上、想像の世界のことよりも現実に存在する事柄を論ずるほうが、断じて有益であると信ずる。
 古今東西多くの賢人たちは、想像の世界にしか存在しえないような共和国や君主国を論じてきた。しかし人間にとって、いかに生きるべきかということと、実際はどう生きているかということは、大変にかけ離れているのである。
 だからこそ、人間いかに生きるべきか、ばかりを論じて現実の人間の生きざまを直視しようとしない者は、現に所有するものを保持するどころか、すべてを失い破滅に向かうしかなくなるのだ。
 なぜなら、なにごとにつけても善を行おうとすることしか考えない者は、悪しき者の間にあって破滅せざるをえない場合がおおいからである。
 それゆえに、自分の身を保とうと思う君主(指導者)は、悪しき者であることを学ぶべきであり、しかもそれを必要に応じて使ったり使わなかったりする技術も、会得すべきなのである。

── 『君主論』(塩野七生マキアヴェッリ語録』)

マキアヴェッリ語録 (新潮文庫)

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