教育勅語論争
「【主張】教育勅語論争 理念読み取る力こそ育め」(産経新聞)
→ http://www.sankei.com/column/news/170411/clm1704110002-n1.html
「徳を積む」「徳が高い」というように、人として身につけておきたい態度や教えなどがある。それを分類、整理したものが徳目である。
明治23年に発布され、その徳目を示した教育勅語に対する誤解が相変わらずあるようだ。
政府はこれを学校の教材として扱うことについて、憲法などに反しない形で用いることは「否定しない」という答弁書を示した。これに対し、「軍国教育への回帰だ」などの批判が相次いでいる。
徳目には、時代を超えて流れる教育理念として、改めて読みとるべきものも多い。不当な評価は見直すときである。
政府答弁書は、教育勅語を「教育の唯一の根本」とするような指導は不適切だとも述べている。
教育勅語それ自体は、現行の中学歴史や高校の日本史や倫理の教科書に登場する。天皇中心の国家観を支え、戦中に戦意高揚に使われたなどと、批判的に位置付けるものが少なくない。
これは、編纂(へんさん)過程を無視した誤解に基づく。教育勅語は、明治維新後、西洋思想などが急激に入る変革期に、徳育に何を求めるかの議論が起き、当時の法制局長官、井上毅らが起草を進めた。
特定の宗教思想にとらわれず、近代立憲主義に基づく市民倫理や伝統的徳目が調和してつくられていることが、近年の研究でも知られている。
「朕惟(ちんおも)フニ」と、明治天皇が国民に語る形で書かれていることや、冒頭に続く「我カ皇祖皇宗」のくだりをとらえ、「国民主権に反する」などと批判するのが、今日、どれほど建設的だろうか。
歴代天皇と国民が心を一つにして、祖先が築いた道徳を守ってきた。そういう日本の美風に言及しながら、この国柄こそ教育の源だと説いているのである。
戦後の日本では、国柄に根差した親孝行や信義といった徳目が否定されてきた。こうした排除の論理は、多様な視点で考える現代の教育の方針にそぐわない。
とくに批判の的となるのは「一旦緩急アレハ」と、義勇奉公を説く文言だ。国の危急のとき、国民がそれぞれの立場で一致協力するという意味に尽きる。戦後日本で置き去りにされてきたことに、目をつむってはなるまい。
よく理解せず、批判する大人こそ、じっくりと読んだらよい。
勅語には人類普遍の真理、12の徳目が書いてある。
- 父母ニ孝ニ (【孝行】-親に孝養を尽くしましょう)
- 兄弟ニ友ニ (【友愛】-兄弟・姉妹は仲良くしましょう)
- 夫婦相和シ(【夫婦の和】-夫婦は互いに分を守り仲睦まじくしましょう)
- 朋友相信ジ(【朋友の信】-友だちはお互いに信じ合いましょう)
- 恭倹己レヲ持シ(【謙遜】-自分の言動を慎みましょう)
- 博愛衆ニ及ボシ(【博愛】-広く全ての人に慈愛の手を差し伸べましょう)
- 学ヲ修メ業ヲ習ヒ(【修業習学】-勉学に励み職業を身につけましょう)
- 以テ智能ヲ啓発シ(【知能啓発】-知識を養い才能を伸ばしましょう)
- 徳器ヲ成就シ(【徳器成就】-人格の向上につとめましょう)
- 進デ公益ヲ広メ世務ヲ開キ(【公益世務】-広く世の人々や社会のためになる仕事に励みましょう)
- 常ニ国憲ヲ重ジ国法ニ遵ヒ(【遵法】-法律や規則を守り社会の秩序に従いましょう)
- 一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ(【義勇】-国に危機があったなら正しい勇気をもって国のため真心を尽くしましょう)
『教育勅語』(明治神宮) http://www.meijijingu.or.jp/about/3-4.html
『教育勅語を書いてみましょう』(明治神宮) http://www.meijijingu.or.jp/kyouikuchokugo/pc/
『教育勅語 特集ページ』(北海道神社庁) http://www.hokkaidojinjacho.jp/top.html
『教育勅語 原文PDF』(北海道神社庁)http://www.hokkaidojinjacho.jp/kchokugo.pdf (PDF)
そもそも教育勅語は、その徳目を誰かが新しく考え出したものではなく、昔から日本人の道徳規範であったものを、あらためて勅語の形にまとめたものであるから、これに違和感を持つ日本人はおらず、大いに歓迎されて、親も子供に暗記させていたのであった。それは憲法の方がよそよそしく、一般の人々には関係ないものと考えられていたのとは対照的であったといえよう。それがなくなるということは、日本人の意識から徳目がなくなるということに連なるのだ。
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