満開の下
北海道の桜はまだ先ですが、
桜の花が咲くと人々は酒をぶらさげたり団子をたべて花の下を歩いて絶景だの春ランマンだのと浮かれて陽気になりますが、これは嘘です。なぜ嘘かと申しますと、桜の花の下へ人がより集って酔っ払ってゲロを吐いて喧嘩して、これは江戸時代からの話で、大昔は桜の花の下は怖しいと思っても、絶景だなどとは誰も思いませんでした。近頃は桜の花の下といえば人間がより集って酒をのんで喧嘩していますから陽気でにぎやかだと思いこんでいますが、桜の花の下から人間を取り去ると怖ろしい景色になりますので、能にも、さる母親が愛児を人さらいにさらわれて子供を探して発狂して桜の花の満開の林の下へ来かかり見渡す花びらの陰に子供の幻を描いて狂い死して花びらに埋まってしまう(このところ小生の蛇足)という話もあり、桜の林の花の下に人の姿がなければ怖しいばかりです。
「東京都心で桜満開=全国一番乗り-気象庁」(時事通信)
→ http://www.jiji.com/jc/article?k=2017040200234&g=soc
「二十四節気『清明』。いよいよお花見本番へ!春季玲瓏・春満開の日本です」(tenki.jp)
→ http://www.tenki.jp/suppl/yasukogoto/2017/04/04/21721.html
- 作者: 坂口安吾
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