「『石原慎太郎節』はいつまで健在か?」
「【野口健の直球&曲球】時には暴言も… 『石原慎太郎節』はいつまで健在か?」(産経新聞)
→ http://www.sankei.com/column/news/170309/clm1703090004-n1.html
僕が高校生の頃、夢中になって読んだ本に『「NO」と言える日本』がある。石原慎太郎さんがソニーの盛田昭夫さんと共同執筆されたエッセーで、中でも石原さんの、日本は世界に対して毅然(きぜん)と物申すべきだ、という主張に強く共感したものだった。
時が流れ、環境活動に取り組む中で、東京都知事に就任された石原さんと仕事をご一緒する機会に恵まれた。都独自のレンジャー(自然保護員)制度の創設だった。僕は都をはじめ他の自治体にも、地方独自のレンジャー制度の必要性を訴えてきた。しかし「理想はわかるけど。前例がない」といった反応ばかり。
諦めかけていたとき、石原さんと白神山地を訪れる機会を得た。「石原さんならわかってくれるかも」と僕は日本の自然保護のあり方について思いをぶつけた。環境省は予算も少ない。全て国に任せていたら自然環境は守られないと。その場では特に目立った反応はなかった。僕は、やっぱりだめか、と意気消沈。
しかし、である。なんと翌日の朝、取材陣の前で石原さんは唐突に「東京都は来年から独自のレンジャー制度を立ち上げる。初代隊長は野口健。あとは本人に聞け」と発表。ニヤッとあの笑みを浮かべ、その場を立ち去った。突然の展開に、記者の皆さんはもとより、秘書や職員まで、唖然(あぜん)としていた。
それはとても痛快で、「石原さんらしいなあ」と思ったものだった。その後他の自治体でも同様の制度が始まり、ついには国も動き、日本の自然公園の保全施策は大きく前進した。まさしく「東京から国を変える」瞬間を感じたときだった。
ディーゼル車規制、銀行税、東京五輪、あげればキリがないが、「石原節」で国と丁々発止やりながら、改革を断行した。時にはとんでもない暴言も飛び出す。でも「石原さんだからしようがないか」。そんなふうに思わせてしまう不思議な魅力があったし、受け止める側にも度量があったような気がする。
過日、石原さんの会見を見た。「最後まで慎太郎さんらしくあってほしい」と思いながらも、石原慎太郎を演じ続ける人生もまた大変なのだろうと感じていた。
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