守りに入ってどうするの?
「【野口健の直球&曲球】どこへいったのか、若者の冒険心 守りに入ってどうするの?」(産経新聞)
→ http://www.sankei.com/column/news/170209/clm1702090004-n1.html
世界を旅していてつくづく感じるのは日本人、特に若者の姿が減ったことだ。特に秘境なり僻地(へきち)では。僕が学生の頃は、ヒッチハイクで世界旅行したお笑いコンビの猿岩石(さるがんせき)や沢木耕太郎の「深夜特急」の影響もあったのだろう。ネパールやチベット、アフリカまで日本人学生のバックパッカー姿をよく目にしたものだ。登山隊にも同じ現象が。エベレストに挑戦する日本隊には70代以上の方も少なくない。日本隊をサポートし続けてきたシェルパたちは高齢化していく日本隊の姿に「ケン、以前は若い人も多かった。日本から若い人がいなくなったの?」と首をかしげている。
エベレストの最高齢登頂記録は男女共に日本人だ。高齢者が元気な証(あかし)であり立派な記録だ。それは間違いない。しかし、若い人の冒険心はどこにいってしまったのか。
日本人登山家が世界で活躍したのは1970~80年代がピークだった。高度経済成長期からバブル期の日本社会には勢いがあった。冒険者の活躍はその社会を反映しているような気がしてならない。
一昨年の12月、エベレストやマナスル峰にも一緒に登頂した大切な山仲間の谷口けいさんが北海道の黒岳で遭難。国際的に活躍し、世界で最も優秀な登山家に与えられるピオレドール賞をアジア人として、女性として初受賞。これからさらに活躍を期待されていたその矢先の訃報だった。
生前、彼女は「日本人のチャレンジ精神はどこにいったの? 若い時から守りに入ってどうするの。生きる目標もなく目がドヨンとしている人が多すぎる。もっと生きることにストイックになってほしい」と話していた。
彼女が遭難してからはや1年。けいさんのご両親と話し合い、若手冒険家を資金的にサポートする「谷口けい冒険基金」を設立した。1回目の応募は今月28日が締め切り。日本隊がマナスル峰に初登頂を果たしたときや、植村直己さんのエベレスト日本人初登頂時に日本中が沸いたように冒険が社会に活力を与えることもあるだろう。過去の実績は不要。ワクワクするような冒険ヤロー、冒険女子からの連絡を待っている。
『谷口けい冒険基金』 http://keifund.net
「若き日に旅をせずば、老いての日になにを語る」
── ゲーテ
『2012年10月29日(Mon) memory of...』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20121029
『2012年08月10日(Fri) memories』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20120810
『2005年08月02日(Tue) 「旅に出ます」 』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20050802
『2006年11月15日(Wed) 留守よろしく(1日目)』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20061115
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