一日一言「善と悪」
二月八日 善と悪
世の中のすべてのものは、人に宿ってその心となるが、ゆえに心は活物(いきもの)であって、常に生き生きとしている。心は一つの事象に感じて動くもので、これを意と言う。動くときは人の気持ちが主体となるがゆえに、善ともなれば悪ともなるのである。自然体で形にこだわらない思いやりを善と名づける。形にこだわって自然体ではない思惑が入ることを、悪と言う。それが私利私欲となる。
そことなくそよぐ難波の浦風に
よしあしのみやみだれそむらん <三輪執斎>
アンゴ先生、かく語りき。
すべて人間世界に於ては、物は在るのではなく、つくるものだ。私はそう信じています。だから私は現実に絶望しても、生きて行くことに絶望しない。本能は悲しいものですよ。どうすることも出来ない物、不変なもの、絶対のもの、身に負うたこの重さ、こんなイヤなものはないよ。だが、モラルも、感情も、これは人工的なものですよ。つくりうるものです。だから、人間の生活は、本能もひっくるめて、つくることが出来ます。
── 坂口安吾(『余はベンメイす』)
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