一日一言「善行に遠慮は不要」
一月二十日 善行に遠慮は不要
人の世話をすれば親切ぶると言われ、読書をすれば学者ぶると言われ、自分の考えを述べれば利口ぶると言われ、真面目になれば君子ぶると言われても、人の言葉を恐れていては、電車で他人に席を譲ることも、書店で本を買うこともできない。自分の心の信じるところを実行しないことのほうが、じつは「ぶる」ことの極みなのだ。善いことを行うのに遠慮は無用である。
かたくなと笑へば笑へ真直な
誠の道を行ける此の身を
他人が正しくないと云って憤るよりも、自分一人だけが先づ真理を行ふことの満足のうちに生存の意義を見出すべきではないですか。
── 坂口安吾(『青年に愬ふ―大人はずるい―』)