NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

知らない人に挨拶されたら、「逃げる」のが正しいか?

4日の『産経抄』より。

「【産経抄】知らない人に挨拶されたら、『逃げる』のが正しいか? 12月4日」(産経新聞
 → http://www.sankei.com/column/news/161204/clm1612040004-n1.html

 ある旅客機に年配の女性が乗ってきた。窓側の席に着いたその人は、箱を膝に乗せている。

 聞けば、長年連れ添った夫の遺骨という。「ご主人さまには、隣のお席に座っていただき…シートベルトを締めて差し上げてください」。客室乗務員(CA)の言葉に、女性の口元がほころんだ。隣は空席だった。元日本航空CAの江上いずみさんが、近著『“心づかい”の極意』(ディスカヴァー)につづった実話である。

 応変の接客術を、江上さんは「心づかいの引き出し」と呼ぶ。危険ですので、お荷物は棚に-と四角四面に応じても、機上の花は咲かなかったろう。場面に応じて引き出しを使い分けるのが「おもてなし」の肝という。この場合はどうか。「敷地内での挨拶を禁ず」。神戸市内のマンションで打ち出された取り決めが、地元紙への投書を機に波紋を呼んでいる。

 「知らない人に挨拶されたら、逃げるように教えているので」。小学生の保護者が防犯策の一環として提案したらしい。林立するマンションの中で、各家庭が孤絶している。「挨拶しなさい」ではなく「逃げなさい」は、時代を冷ややかに映していよう。おのが住まいと隣近所を隔てる壁は高くて分厚いようだが、大人たちが沈黙で応じるのは考えものである。

 私見ながら、こんな試みはいかがか。朝の出がけなら「おはよう」に「行ってらっしゃい」の一語を添える。夕刻は「お帰りなさい」。江上さんによると挨拶は「バイネーム」がよいという。つまり子供たちの名前を呼んで声を掛ける。同じマンションの住民という響きが子供たちに伝わろう。仮に敬遠されたなら、それでもいい。

 子供の無事を願って見守るのも大人の度量だろう。この場合の沈黙は「金」である。


昨日、12月5日は会津藩九代藩主、松平容保公の命日でした。(明治26年12月5日)


温故知新。

会津藩『幼年者心得之廉書』

  • 毎朝早く起きて、顔や手を洗い、歯を磨き、髪の毛を整え、衣服を正しく着て、父母に朝のご挨拶をしなさい。そして、年齢に応じて部屋の中を掃除し、いつお客様がお出でになってもよいようにしなさい。
  • 父母及び目上の方への食事の給仕、それからお茶や煙草の準備をしてあげなさい。父母が揃って一緒に食事をする時は、両親が箸を取らないうちは子供が先に食事をしてはいけません。理由があって、どうしても早く食べなければならない時は、その理由を言って許しを得てから食事をしなさい。
  • お父さんやお母さんが家の玄関を出入りなさったり、あるいは目上の方がお客様として玄関にみえられた時、お帰りになる時は、お客様の送り迎えをしなければいけません。
  • 子供が外出をする時は、お父さんやお母さんに行き先を告げ、家に帰ったならば只今戻りましたと、挨拶をしなさい。すべて何事も先ず父母におうかがいをし、自分勝手なことをすることは許されません。
  • お父さんやお母さん、それから目上の方と話をする場合は立ちながらものを言ったり、立ったままでものを聞くことはいけません。また、いくら寒いからといって自分の手を懐の中に入れたり、暑いからといって扇を使ったり、衣服を脱いだり、衣服の裾をたぐり上げたり、そのほか汚れたものをお父さんやお母さんの目につく所に置くようなことをしてはいけません。
  • お父さんやお母さん、ならびに目上の人の方々から用事を言いつけられた時は、謹んでその用件を承り、そのことを怠らないでやりなさい。なお、自分を呼んでおられる時は、速やかに返事をしてかけつけなさい。どのようなことがあっても、その命令に背いたり、親を親とも思わないような返事をしてはいけません。
  • お父さんやお母さんが寒さを心配して。衣服の重ね着をおすすめになったら、自分では寒くないと思っても衣服を身につけなさい。なお、新たに衣服を用意して下さった時は、自分では気に入らないと思っても、謹んで頂きなさい。
  • お父さんやお母さんが常におられる畳の上には、ほんのちょっとしたことでも上がってはいけません。また、道の真ん中は偉い人の通るところですから、子供は道の端を歩きなさい。そして、門の敷居は踏んではいけないし、中央を通ってもいけません。ましてや藩主や家老がお通りになる門はなおさらのことです。
  • 先生またはお父さんお母さんと付き合いがある人と途中で出会った時は、道の端に控えてお礼をしなさい。決して軽々しく行き先など聞いてはいけません。もし、一緒に歩かなければならない時は、後ろについて歩きなさい。
  • 他人の悪口を言ったり、他人を理由もないのに笑ったりしてはいけません。あるいは、ふざけて高い所に登ったり、川や水の深い所で危険なことをして遊んではいけません。
  • すべて、先ず学ぶことから始めなさい。そして、学習に際しては姿勢を正し、素直な気持ちになり、相手を心から尊敬して教わりなさい。
  • 服装や姿かたちというものは、その人となりを示すものであるから、武士であるか、町人であるかがすぐにわかるように、武士は武士らしく衣服を整えなさい。決して他人から非難されるようなことのないようにしなさい。もちろん、どのように親しい間柄であっても、言葉遣いを崩してはいけません。自分より下の者や品のない人間と、同じように見られるようなことをしてはなりません。また、他の藩の人達に通じないような、下品な言葉遣いをしてはいけません。
  • 自分が人に贈り物をする時でも、父がよろしく申しておりました、と言い添え、また、贈り物を頂いた場合が、丁寧にお礼を述べながら父母もさぞかし喜びます、と言い添えるようにしなければなりません。すべてに対して父母をまず表に立てて、子が勝手に処理するのではないことを、相手にわかってもらえるようにしなければなりません。
  • もしも、お父さんやお母さんのお手伝いをする時は、少しでも力を出すのを惜しんではいけません。まめに働きなさい。
  • 身分の高い人や目上の人が来た時には、席を立って出迎え、帰る時にも見送りをしなければなりません。それにお客様の前では、身分の低い人はもとより、犬猫にいたるまで決して叱り飛ばしてはいけません。また、目上の人の前で、ものを吐いたり、しゃっくりやげっぷ、くしゃみやあくび、わき見、背伸び、物に寄りかかるなど、失礼な態度に見えるような仕草をしてはいけません。
  • 年上の人から何かを聞かれたならば、自分から先に答えないで、その場におられる方を見回して、どなたか適当な方がおいでになっていたら、その方に答えてもらいなさい。自分から先に、知ったかぶりをして答えてはいけません。
  • みんなで集まってわいわいお酒を飲んだり、仕事もしないで、女の人と遊ぶいかがわしい場所に出かけるのを楽しみにしてはいけません。特に男は、年が若い頃は女の子と二人だけで遊びたい本能をおさえることは、なかなか難しいとされています。だからといってそのような遊びを経験し、癖ともなれば、それこそ一生を誤り、大変不名誉な人生を送ることになりかねません。だから、幼い頃から男と女の区別をしっかりし、女と遊ぶ話などしないことが大切なのです。あるいは、下品な言葉を発して周りの人を笑わせたり、軽はずみな行いをしてはいけません。なお、喧嘩は自分で我慢が出来ないから起こるものであって、何事も辛抱強く我慢して喧嘩をしないように、いつも心がけなさい。


また、会津の子供達には掟があった。「什(じゅう)の掟」である。

什の掟

一、年長者の言うことに背いてはなりませぬ

二、年長者にはお辞儀をせねばなりませぬ

三、うそを言うてはなりませぬ

四、卑怯な振る舞いをしてはなりませぬ

五、弱い者をいじめてはなりませぬ

六、戸外で物を食べてはなりませぬ

七、戸外で婦人と言葉を交えてはなりませぬ


ならぬことはならぬものです。

“ならぬことはなりませぬ。”

あいづっこ宣言』(会津若松市) http://www.city.aizuwakamatsu.fukushima.jp/docs/2007080601668/
『會津藩校日新館』 http://www.nisshinkan.jp/

幾人の 涙は石にそそぐとも その名は世に 朽ちじとぞ思ふ

── 松平容保 



『2005年08月19日(Fri) 「18日目」』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20050819

会津武士道 (PHP文庫)

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会津武士道―「ならぬことはならぬ」の教え (青春新書INTELLIGENCE)

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