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NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

「流行を追うな。外国人のまねをするな。珍しい所を見抜け」

今日の『産経抄』より
「流行を追うな、外国人のマネをするな 10月3日」(産経新聞
 → http://www.sankei.com/column/news/161003/clm1610030003-n1.html

 物理学者で随筆家でもあった寺田寅彦の研究テーマの一つに、椿(つばき)の花の落下運動がある。きっかけは、文学の師である夏目漱石の俳句「落ちさまに虻(あぶ)を伏せたる椿哉」だった。

 果たして虻を抱え込んだまま、花は着地できるのか。自宅と研究所に椿の木を植え、落ちた花の向きを調べる。空気抵抗の影響をより正確に確かめるために、円錐(えんすい)形の紙模型を使った実験も行った。自ら「珍研究」と称した成果は、英文の論文となって発表されている。

 「まず人を笑わせ、次に考えさせる」、まさに珍研究を授賞対象とするイグ・ノーベル賞が80年前に存在していたら、寅彦も受賞していたかもしれない。今年は股の間から世界を見る「股のぞき」の研究で、立命館大学の東山篤規(あつき)教授らが受賞した。1991年に始まったこの賞では、日本人が10年連続で受賞している。日本には、風変わりな人を評価する傾向があるからではないか、と賞の主催者は見ているそうだ。

 今週は、いよいよノーベル賞の受賞者が発表される。本家本元の賞でも、日本人科学者の活躍が目立つ。今世紀に入って、物理学、化学、医学・生理学の自然科学3賞については、日本は米国に次いで2番目に受賞者が多い。

 実は、寅彦ももう少しでノーベル賞に手が届くところだった。X線を使って結晶の構造を調べる研究で、英国のブラッグ父子が、15年にノーベル物理学賞を受賞している。寅彦もほぼ同じ時期に、2人の研究に匹敵する業績を挙げていたという。

 「流行を追うな。外国人のまねをするな。珍しい所を見抜け」。寅彦が弟子たちを叱咤(しった)激励するために口にしていた言葉である。それを受け継ぐ日本人研究者の受賞ラッシュを、今年も大いに期待している。


「天災は忘れた頃にやって来る」の寺田寅彦
物理学者にして随筆家、俳人
吾輩は猫である』の水島寒月や『三四郎』の野々宮宗八は彼がモデルである。

 私は、日本のあらゆる特異性を認識してそれを生かしつつ周囲の環境に適応させることが日本人の使命であり存在理由でありまた世界人類の健全な進歩への寄与であろうと思うものである。世界から桜の花が消えてしまえば世界はやはりそれだけさびしくなるのである。

── 寺田寅彦(『日本人の自然観』)

天災と日本人  寺田寅彦随筆選 (角川ソフィア文庫)

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寺田寅彦随筆集 (第1巻) (岩波文庫)

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