賢治忌
わたしたちは、氷砂糖をほしいくらゐもたないでも、きれいにすきとほつた風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。
またわたくしは、はたけや森の中で、ひどいぼろぼろのきものが、いちばんすばらしいびろうどや羅紗(らしゃ)や、宝石いりのきものに、かはつてゐるのをたびたび見ました。
わたくしは、さういふきれいなたべものやきものをすきです。
これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、虹や月あかりからもらつてきたのです。
ほんたうに、かしはばやしの青い夕方を、ひとりで通りかかつたり、十一月の山の風のなかに、ふるへながら立つたりしますと、もうどうしてもこんな気がしてしかたないのです。ほんたうにもう、どうしてもこんなことがあるやうでしかたないといふことを、わたくしはそのとほり書いたまでです。
ですから、これらのなかには、あなたのためになるところもあるでせうし、ただそれつきりのところもあるでせうが、わたくしには、そのみわけがよくつきません。なんのことだか、わけのわからないところもあるでせうが、そんなところは、わたくしにもまた、わけがわからないのです。
けれども、わたくしは、これらのちいさなものがたりの幾きれかが、おしまひ、あなたのすきとほつたほんたうのたべものになることを、どんなにねがふかわかりません。
昭和8年(1922)9月21日 宮沢賢治 没。
今日は賢治忌。
そして今年は生誕120周年。
「賢治の辞世と秋祭りとの関係は?生誕120年の賢治忌」(tenki.jp)
→ http://www.tenki.jp/suppl/miyasaka/2016/09/21/15751.html
『2016年の宮沢賢治―科学と祈りのこころ』(北海道立文学館) http://www.h-bungaku.or.jp/exhibition/special.html
行かないと。
『宮沢賢治記念館』 http://www.city.hanamaki.iwate.jp/sightseeing/kenjimm/
『宮沢賢治記念会』 http://www.miyazawa-kenji.com/
『2005年08月04日(Thu) 「3日目」』 http://d.hatena.ne.jp/nakamoto_h/20050804
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