NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

山を愛し、正しく恐れる。

昨日の『産経抄』より。


「【産経抄】山男に惚れるより 8月11日」(産経新聞
 → http://www.sankei.com/column/news/160811/clm1608110003-n1.html

 男声四重合唱団のダークダックスが、「山男の歌」を発売したのは、昭和37(1962)年である。3年前に始まった深田久弥(きゅうや)による山岳エッセー「日本百名山」の雑誌連載も、評判を呼んでいた。当時は、戦後最初の登山ブームのピークを迎えていた。

 この曲は戦後すぐ、南アルプスを縦走中だった専門学校生の神保信雄が、海軍兵学校の愛唱歌「巡航節」に替え歌をつけて生まれたものだ。ダークダックスの「ゲタさん」こと、喜早哲(きそうてつ)さんによると、前橋市でのコンサートを終え宿舎に帰る途中、観客の一人から教わった。

 最大のヒット曲でありながら、レコーディングでは「一番気が乗らなかった」。今年3月に85歳で亡くなった喜早さんは語っていた(『日本の美しい歌』)。「娘さんよく聞けよ 山男にゃ惚(ほ)れるなよ」。その理由の一つに、山での遭難死を挙げているからだ。

 2年前に制定された祝日の「山の日」を今日、初めて迎えた。最近では、「山男」より「山そのもの」に惚れる若い女性が増えている。現在の登山ブームを支えているのは、こうした「山ガール」と中高年の愛好者である。

 自然に親しみ、健康増進にも役立つという点では、好ましい風潮といえる。ただここ10年の山岳遭難の増加傾向は看過できない。警察庁によると昨年、遭難者が初めて3000人を超え、死者・行方不明者も335人に達している。地図が読めなくて道に迷った。低山に1回登っただけで、いきなり3000メートル級の山に挑戦する。レジャー感覚で山に入り、事故に遭遇するケースが目立つ。

 山を愛し、正しく恐れる。山との付き合い方を学ぶ日にしなければ、ただでさえ多すぎる祝日を増やした意味がなくなってしまう。