マイカー
今日の『産経抄』より。
「【産経抄】若者にはマネできない…クルマとガソリン代400万円 4月10日」(産経新聞)
→ http://www.sankei.com/column/news/160410/clm1604100005-n1.html
暮らしになじんだ和製英語に「マイカー」がある。言葉の起こりは昭和37年ごろで、結構古い。三島由紀夫が教習所でハンドルを握ったのも、その頃という。コースから外れた前輪をうらめしげに見る渋面が、以前の小紙に載っていた。ペンを走らせるのとは勝手が違ったらしい。
音楽プロデューサーの松任谷正隆さんは、18歳で初めて車を手に入れた喜びを小紙に語っている。「あの感動は二度と味わえない。スペースシャトルを買えたとしても」。自動車評論家としても名高い人に、そう言わしめたのは40年代半ばに買ったカローラである。
59万8千円だった。国家公務員の初任給が約2万6千円という時代には、一つのステータスだったろう。バブル期には愛車の遍歴を競う若者も多かった。マイカーに個性を重ね合わせた時代を思えば隔世の感、寂しさすら覚える統計を日本自動車工業会が公表した。
車を持たない10~20代の社会人のうち6割に購入の意思がなく、「関心なし」との回答も7割にのぼった。転ぶ先の見えぬ経済情勢を思えば、ガソリン代や維持費などとかく物入りのマイカーは、現実的でないのだろう。「貯蓄に回す」との堅実路線も多いと聞く。
♪片手で持つハンドル/片手で肩を抱いて(『中央フリーウェイ』)。松任谷さんの妻、由実さんの歌にある。この後、「愛してる」と恋人に告げた声は風にかき消された。「あの感動」を知らぬ世代にとっては遠いメロディーかもしれない。名曲も所在なかろう。
ある女性国会議員の政党支部では、平成24年のガソリン代が400万円を超えたという。車が必需品の恵まれた世界では、地球を何周もできるカネと時間があるらしい。世の実相とかけ離れた、間抜けな話もある。
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