NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

憲法のために国家があるんぢやないんだが

今日の『産経抄』より。
「【産経抄】憲法のために国家がある? 3月30日」(産経新聞
 → http://www.sankei.com/column/news/160330/clm1603300002-n1.html

 しばしば憲法は、野党にとって、政府攻撃の道具となる。いわゆる「統帥権干犯」の騒動もそうだった。ことの起こりは、昭和5(1930)年に開かれたロンドン海軍軍縮会議である。

 日本政府は英米両国と、補助艦の保有トンを制限する条約を結んだ。これに猛反発したのが、海軍の強硬派と野党・政友会である。明治憲法には、「天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス」と定められていた。政府が勝手に兵力量を決めたのは、統帥権の干犯、との理屈を持ち出したのだ。

 憲法のなかの大きな矛盾をはらんだ条項について、「死守せねば国が亡(ほろ)びる」と言い立てた。海軍の歴史にくわしい作家の阿川弘之さんによれば、彼らこそ国を滅ぼした張本人である(『葭(よし)の髄(ずい)から』)。実際、騒動は軍部の独走を招く結果となる。

 安全保障関連法がようやく施行された。中国は東・南シナ海で、領土拡張の野心をますますあらわにしている。北朝鮮は核・ミサイル開発を着々と進めている。もはや、一国で平和を維持することは難しい。集団的自衛権の限定行使を認める新たな法の枠組みのもとで、戦争を抑止するしかない。

 これに対して、野党は憲法違反を主張している。ほとんどの憲法学者も、同じ意見だという。それどころか自衛隊の存在さえ、違憲または、違憲の恐れがあるとする学者が7割を占める。厳しい国際情勢を直視せず、憲法9条を「死守」するだけでは、かえって国家に一大事をもたらす。戦前のゆがんだ“護憲”騒動が残した教訓である。

 軍縮を支持した海軍将官の一人、井上成美提督は、戦後も長く生きた。阿川さんによると、「平和憲法絶対護持」の運動にこんな感想をもらした。「憲法のために国家があるんぢやないんだがなあ」

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雲の墓標 (新潮文庫)

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