人間関係がうまくいかない人は『論語』を読め
「人間関係がうまくいかない人は『論語』を読め 『こんな会社、辞めてやる』と思う人への格言」(東洋経済オンライン)
→ http://toyokeizai.net/articles/-/107614
今年も、人事異動や配置転換の季節が近づいてきました。思わぬ辞令を受け、「こんな会社、やめてやる!」と思う方もいるかもしれません。この時期にかぎらず、働いていると、不満や悩みを抱えるもの。その多くは人間関係が原因といわれています。
「子、曰わく~」で始まる言葉、学生時代に聞いたことのある方も多いでしょう。中国古典の中でも指折りの名著といえる『論語』。2500年前から今に至るまで『論語』が経営者やビジネスマンに愛読されるのには、理由があります。仕事や人間関係によく効く「名言」の宝庫だからです。拙著『まんがでわかる論語』(あさ出版)でも解説しているのですが、今も昔も、基本的な悩みは同じ。先人に状況を打開するアドバイスをもらいましょう。
歴史に残るリーダーにも「ちっぽけな悩み」があった
「西の聖書、東の論語」といわれるように、東洋では古くから基本的な教養書とされ、日本でも、古くは国づくりの祖ともいえる聖徳太子や250年以上続く泰平の江戸時代を築いた徳川家康、日本近代化の転換期に活躍した坂本龍馬や吉田松陰など、国を変えていった偉人たちがバイブルとしていました。
そんな話を聞くと「そんな大きな話じゃない」「もっと小さな悩みだし」と思うかもしれません。しかし、時代を動かしたリーダーも、『論語』の孔子自身も、私たちと同じように人間関係の小さな悩みをたくさん抱えていました。
たとえば、この言葉。
「如之何(いかん)、如之何と曰わざる者は、吾(わ)れ如之何ともすること末(な)きのみ」(衛霊公第15-16)
「どうしようと言わない人は、どうしようもないねぇ」。こんな孔子のぼやきが聞こえてくるようです。
あなたにも、業務やプロジェクトが行き詰まり、困った状況になっても、「どうしたらいいですか?」とも聞いてこない部下や後輩がいるかもしれません。孔子も同じようなことで悩んでいました。
さらに孔子は、
「憤(ふん)せずんば啓(けい)せず。悱(ひ)せずんば発せず」(述而第7-8)
とも言っています。
これは、「やる気がないなら、教える気にはならないぞ」という意味。教える側にだって、モチベーションがあります。孔子の時代にも、「指示待ち人間」がいて、頭を悩ませていたのでしょう。
「人を責める自分はどうなのか?」を振り返る
「ああ、いるいる」と部下や後輩を思い出して、ため息をついているかもしれません。しかし、あなた自身はどうでしょうか。孔子は、自分をたびたび振り返っています。
「不賢を見ては内に自ら省みる」(里仁第4-17)
人を注意・批判することは簡単ですが、それを見て「さて、自分は大丈夫だろうか? できているだろうか?」と反省できる人間はどのくらいいるでしょうか。自分のためにも、常に自分の成長をセットで考えたほうがよいのです。
「後生(こうせい)畏(おそ)るべし」(子罕第9-23)
という言葉では、「若者はおそるべき存在で、自分たちより優秀かもしれないよ」と、年下の人間の可能性を説いています。「ダメなヤツ」「使えない」という気持ちではなく、磨けば光る原石と思い、育てていく気持ちが大事なのでしょう。
人を変えることはできません。変えることができるのは、自分だけ。『論語』では、徳のある仁者をめざすことを目標としましたが、「仁」、つまり、思いやりや慈しみの心をもって当たれば、人を動かすことはできます。自分が変わり、人の心を動かすことが重要なのです。
上司を万能と思わなければ許せる
上司と合わない……と上司との人間関係に悩む人も多いでしょう。
どんな点が合わないのでしょうか。仕事をしない? 正当な評価をしてくれない? それとも、部下の成果を自分のものにする?
すべてにおいて完ぺきな人間がいないように、すべてにおいて無能という人間もいません。何かしら、「長所」があるはずです。
孔子は、
「備わるを一人に求むること無かれ」(微子第18-10)
といって「ひとりにすべての能力を求めるな」と戒めていますが、上司に対しては、「自分より能力が高いから、上司なんだろう」と厳しく採点しがちになっていませんか。また、
「其の位に在(あ)らざれば、其の政(まつりごと)を謀(はか)らず」(憲問第14-27)という言葉もあるように、そのポジションでないと見えないこともたくさんあります。
たとえば、新しい業務が増やされたとします。「同僚よりも業務が多く、不公平だ」と不満に思うかもしれません。しかし、上司が「誰よりも期待しているから、新しいプロジェクトにも取り組ませてみよう」と考えているとしたら? まったく逆の評価であることがわかります。
「親の心、子知らず」ともいいますが、自分が親になってみないとわからないこともあるように、立場によって視点は大きく違ってくるのです。
どこに行っても「人間関係」はついて回る
人は、ひとりで生きていくことはできません。「こんな上司も部下も、もう限界!」と思うかもしれませんが、どこに行っても、いい人もいれば悪い人もいます。逆にいえば、悪い人だけでもないでしょう。会社の制度まで変えていくのは難しくても、自分が変わり、少しずつでもまわりの人間に影響を与えることはできるかもしれません。
『論語』の内容は、実はとてもシンプルで、「思いやりの深い人間になろう」といっているのです。
「一(いつ)以(もっ)てこれを貫(つらぬ)く」(衛霊公第15-3)
という言葉もありますが、名経営者や名リーダーと呼ばれる人たちが『論語』を愛読するのも、結局、人間ひとりにできることはそんなに多くないと知っているからなのではないでしょうか。
イライラしたり、心が落ち着かないときには、ひと呼吸置いて『論語』を読んでみることをおすすめします。
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