一日一言「雲は一時」
(春になって東風が吹いたなら、その風に託して配所の大宰府(だざいふ)へ香りを送ってくれ、梅の花よ。主人のこの私がいないからといって、咲く春を忘れるな。)一月二十五日 雲は一時
延喜元年(西暦九〇一年)の今日は、菅原道真がおとしいれられた日である。昨日まで飛ぶ鳥も落とさんという勢いであった道真公も、一瞬にして日陰の人になった。けれども雲は永久に月を隠すものではない。それは、月が俗世間に固執しないためである。ひとときの雲に隠れ、都を去ったとしても、分かれて都に残るものの心には、愛は遺(のこ)るものである。
東風(こち)ふかば匂ひおこせよ梅の花
あるじなしとて春な忘れそ君が住む宿の梢をゆくゆくも
かくるるまでに顧みしはや<菅原道真>
(あなたが住んでいる家の木々の梢を、都を離れ西へ向かって遠ざかって行きながら、隠れて見えなくなるまで振り返って見たことだ。)