NAKAMOTO PERSONAL

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「子供の視点忘れるな」

「【社説検証】夫婦同姓合憲 朝毎など制度見直し求める 産経『子供の視点忘れるな』」(産経新聞
 → http://www.sankei.com/column/news/151223/clm1512230008-n1.html

 夫婦同姓を定める民法の規定について、最高裁大法廷が合憲の判断を示した。家族の形や価値観の多様化と、改姓の不便などを理由に夫婦別姓に賛成する朝日や毎日と、家族の絆を重んじる立場から別姓に反対する産経とで論調の違いが際立った。

 「時代に逆行する判断と言わざるを得ない」と断じたのは朝日である。「女性の社会進出は進み」「結婚したカップルの3組のうち1組が離婚」している。「姓を変えずに事実婚を選んだ人たちが様々な壁で苦労している」と訴えた。

 平成8年、法制審議会が同姓でも別姓でもよい選択的夫婦別姓の導入を答申したが、法改正に至っていない。

 朝日は「『結婚後も同じ姓で生き、同じ姓で死にたい』。そんな思いを抱えながら、苦しんできた人たちが、司法に救済の場を求めたのが今回の裁判である」とし、法改正ができない現状を打開することが「『憲法の番人』の役割であるはずだ」と不満を表した。

 最高裁は、夫婦同姓は社会に定着して合理性があるとした。女性が不利益を受ける場合が多いことは否定できないが、旧姓の通称使用が広まることで緩和されると指摘している。毎日はこの判決を「裏返せば一定程度の不利益は甘受しろ、ということだろうか。こうした主張が、特に女性の理解を得られるのかは極めて疑問だ」と批判した。

 一方、産経は「現行制度は、日本の伝統的な家族観に沿うもので社会に広く受け入れられている。夫婦が責任を共有して子供を育てていく家族の一体感につながる。それを崩す必要はない」と説き、「最高裁の判断は妥当である」と評価した。

 夫婦同姓制度をめぐり、産経が一貫して主張してきたのが、子供の視点の重要性である。「(選択的夫婦別姓で)単に個人の選択の幅が広がるから良いと思うのは誤りだ。仮に導入されれば、親子が別々の姓になる事態も起きる。強いられる子供にとって良いことなのか」と問いかけた。選択的別姓導入の答申から20年近くたっても法改正が行われないのは、「問題を放置したというより、十分な合意が得られないからだ」とみる。

 今回の最高裁判決は国会に、制度をめぐる議論を促してもいる。夫婦別姓に賛成の各紙はこの点を強調し、「(合憲判断は)法改正に動かない政治への免罪符にはならない」(朝日)、「この判決が、国会の現状にお墨付きを与えたと解すべきではない」(毎日)と、国会の対応を求めた。

 やはり別姓に賛成の日経は、「判決は一つの大きな節目ではあるが、終着点ではない。夫婦別姓の問題をどう考えるのか、議論を深めたい」とし、同じく東京は「選択的夫婦別姓など二十一世紀にふさわしい制度を立法府は早く構築すべきであろう」と論じた。

 読売は合憲判断については産経と同様に「妥当」とし、「生活に密着する法制の見直しは、国民の意識と歩調を合わせて検討されることが望ましい」との見解を示している。

 最高裁大法廷は、女性にのみ6カ月の再婚禁止期間を設けた民法の規定については、100日を超える部分を違憲とした。政府は100日に短縮する改正法案を年明けの国会に提出する方針だ。朝日や毎日、東京は、再婚禁止規定そのものの廃止を含めた議論が必要だとしている。産経はこの規定の改正にあたっても、子供の利益が最優先であることを忘れないようクギを刺した。

 時代とともに、暮らし方、働き方が変わり、家族の形が多様化するのは当然である。だからこそ、「家族の呼称」を大切にすべきなのではなかろうか。(内畠嗣雅)

 ■「夫婦同姓」合憲をめぐる社説

 産経

 ・家族の意義と「絆」守った


 朝日

 ・時代に合った民法


 毎日

 ・国会は見直しの議論を


 読売

 ・司法判断と制度の是非は別だ


 日経

 ・「夫婦別姓」の議論に終止符を打つな


 東京

 ・時代に合わせ柔軟に


 〈注〉いずれも17日付


エリオットに曰く、

何といっても文化伝達の最も重要な通路は家族である

── T・S・エリオット

文化の定義のための覚書 (中公クラシックス)

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