一日一言「丸くなりすぎてもだめ」
十一月二十二日 丸くなりすぎてもだめ
世の中のことに同調することは良いが、これも世のならい、あれも社会の傾向だと、心の中でやましいと思うことまで従っていては、弱みにつけこまれて社会の奴隷のようになってしまう。人間はあんまり丸くなりすぎてもだめである。
かばかりの事は浮世の習ひぞとゆるす心のはてぞかなしき
おのづから角(かど)一つあれ人心あまり丸きはころびやすきに
安吾センセにも曰く、
日頃自分の好き嫌ひを主張することもできず、訓練された犬みたいに人の言ふ通りハイハイと言つてほめられて喜んでゐるやうな模範少年といふ連中は、人間として最も軽蔑すべき厭らしい存在だと痛感したのである。
── 坂口安吾(『模範少年に疑義あり』)