NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

善人なほもて往生をとぐ

机の前の日めくりニーチェ

今日は2日。

 特に「善人」と称する人々こそが、
 最も有毒なハエどもであることが、
 私には分かった。
 彼らは全く無邪気に刺し、
 全く無邪気に嘘をつく。
 そんな彼らにどうしてできるはずが
 あろうか、私に対し
 ──公明正大であるということが!

日めくり ニーチェ

日めくり ニーチェ

 私は善人は嫌ひだ。なぜなら善人は人を許し我を許し、なれあひで世を渡り、真実自我を見つめるといふ苦悩も孤独もないからである。悪人は――悪徳自体は常にくだらぬものではあるが、悪徳の性格の一つには孤独といふ必然の性格があり、他をたより得ず、あらゆる物に見すてられ見放され自分だけを見つめなければならないといふ崖があるのだ。善人尚もて往生を遂ぐ況(いわん)や悪人をや、とはこの崖であり、この崖は神に通じる道ではあるが、然し、星の数ほどある悪人の中の何人だけが神に通じ得たか、それは私は知らないが、そして、又、私自身神サマにならうなどと夢にも考へてゐないけれども、孤独の性格の故に私は悪人を愛してをり、又、私自身が悪人でもあるのである。けれどもそれは孤独の性格の故であり、悪人の悪自体を正気で愛し得るものではない。

── 坂口安吾(『蟹の泡』)

人間は自分が善人だと思った時、始末が悪くなる。

── 曽野綾子(『自分をまげない勇気と信念のことば』)