NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

悪の陳腐さについての報告

土曜日だけど、運動の日。


今日の『産経抄』より。
「【産経抄】9月19日」(産経新聞
 → http://www.sankei.com/column/news/150919/clm1509190004-n1.html

 哲学者、ニーチェはこう喝破している。「狂気は個人にあっては稀有(けう)なことである。しかし、集団・党派・民族・時代にあっては通例である」。安全保障関連法案をめぐるここ数日の国会の与野党攻防などを眺めていて、この警句を思い浮かべた。

 集団心理(群集心理)という言葉がある。集団の中で人は他者に引きずられやすくなり、暴力的で狂気じみた行いにも疑問を感じなくなる。それが大規模となれば、魔女狩りや暴動、公開処刑、虐殺へとつながりかねないから恐ろしい。

 参院平和安全法制特別委員会での安保法案採決時の与野党「肉弾戦」には、目をそむけたくなった。民主党参院幹部は「(不測の)軍事衝突みたいなものだ」と語るが、「平和」を掲げていたはずの議員らが、最後は当たり前のように腕力に訴える姿にむなしさを覚えた。

 安保法案の参院特別委採決時には複数のけが人が出たが、一部メディアが新しい民主主義だともてはやす国会前デモも、暴力とは無縁ではない。警察関係者によると、7月15日から9月17日までに公務執行妨害や暴行の現行犯で逮捕されたデモ参加者は24人に上る。

 野党側が16日夜、多数の女性議員を委員会室前の通路に立たせて「壁」を作り、近寄ると「触るな、セクハラだ」と怒鳴って出入りを妨害した問題もまともではない。これに対し、与党側が女性衛視に対応させたところ、ある女性議員はツイッターで「排除に女を使おうなんて姑息(こそく)、卑怯(ひきょう)」とかみついた。

 自身は女性の属性を武器としておきながら、全く不可解な憤激ぶりである。こんな集団の熱狂と毒気に当てられたら、少し1人になって頭を冷やした方がいい。「逃れよ、君の孤独の中へ」。ニーチェはこうも言っている。

「【安保法成立】牛歩、長時間演説、泣き落とし…未明の参院、野党が連発したルール違反の数々」(産経新聞
 → http://www.sankei.com/politics/news/150919/plt1509190076-n1.html

  • 「哲学者、ニーチェはこう喝破している。『狂気は個人にあっては稀有(けう)なことである。しかし、集団・党派・民族・時代にあっては通例である』。」
  • 「集団の中で人は他者に引きずられやすくなり、暴力的で狂気じみた行いにも疑問を感じなくなる。それが大規模となれば、魔女狩りや暴動、公開処刑、虐殺へとつながりかねないから恐ろしい。」
  • 「『平和』を掲げていたはずの議員らが、最後は当たり前のように腕力に訴える姿にむなしさを覚えた。」
  • 「一部メディアが新しい民主主義だともてはやす国会前デモも、暴力とは無縁ではない。」


哲学者、ハンナ・アーレントは集団心理に流され、普段行わないような行動や狂気に走る個人の心理状態を“悪の凡庸さ”(あるいは“陳腐さ”)と呼んだ。
集団に引きずられ、悪意無く、正義の為にと理性を失い、モラルを忘れ悪を行う。英雄でもなければ特段秀でた才能がある訳でもないごく普通の凡庸な人間が行う悪である。
一国の首相を呼び捨てにして全否定し、汚い言葉で罵り、怒号が飛び交う。思考が停止すると、モラルの判断基準までも失う。
安保法案のどこがダメで、どこが必要なのか。有事の代案はあるのか。
右にならえ。もとい。左にならえの受け売りではないのか。思考停止、ただの全否定ではないのか。
郵便ポストが赤いのも、電信柱が高いのもみんな安倍首相のせいだと思ってはいのか。
古人に曰く、坊主憎けりゃ袈裟まで憎し。と。

ソクラテスプラトン以来 私たちは“思考”をこう考えます。自分自身との静かな対話だと。
人間であることを拒否したアイヒマンは人間の大切な質を放棄しました。
それは思考する能力です。
その結果 モラルまで判断不能となりました。
思考ができなくなると 平凡な人間が残虐行為に走るのです。
過去に例がないほど 大規模な悪事をね。
私は実際 この問題を哲学的に考えてみました。

“思考の風”が もたらすのは 知識ではありません

善悪を区別する能力であり 美醜を見分ける力です

私が望むのは 考えることで 人間が強くなることです

危機的状況にあっても 考え抜くことで破滅に至らぬよう

イェルサレムのアイヒマン――悪の陳腐さについての報告

イェルサレムのアイヒマン――悪の陳腐さについての報告

 いったい君に泣き言を言わせた第一の原因は何だったのか? 誰ひとり君に十分に媚びてくれなかったということだ。そのために君はこうした汚物の中に座り、大げさに泣き立てる理由ができたという訳だ。多くの復習をとげる理由を手に入れたという訳だ!

ツァラトゥストラは、かく語りき


ツァラトゥストラはこう言った 上 (岩波文庫 青 639-2)

ツァラトゥストラはこう言った 上 (岩波文庫 青 639-2)