鳥海山

鳥海山（2,236m）登頂。

　名山と呼ばれるにはいろいろの見地があるが、山容秀麗という資格では、鳥海山は他に落ちない。眼路（めじ）限りなく拡がった庄内平野の北の果てに、毅然とそびえ立ったこの山を眺めると、昔から東北第一の名峰とあがめられてきたことも納得出来る。
　東北地方の山の多くはm東北人の気質のようにガッシリと重厚、時には鈍重という感じさえ受けるが、鳥海にはその重さがない。颯爽としている。酒田あたりから望むと、むしろスマートと言いたいほどである。それは鳥海が連嶺の形をなさず、孤立した一峰であるところにも基因する。

──　深田久弥（『日本百名山』）

日本百名山 (新潮文庫)