NAKAMOTO PERSONAL

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“平和主義者”が戦争を起こす

「『平和運動の名に値しない』 安保法案反対集会での首相への『お前は人間じゃない』発言などに 石平氏寄稿」(産経新聞
 → http://www.sankei.com/west/news/150901/wst1509010066-n1.html

 東京・永田町の国会議事堂周辺などで行われた安全保障関連法案に反対する集会をめぐり、評論家の石平氏が「平和を語る資格」について産経新聞に寄稿した。石平氏安倍晋三首相をののしる言葉の暴力に「日本のリベラルは死んだ」と嘆いた。寄稿の全文は次の通り。


言葉の暴力

 8月30日、国会議事堂前での安保法案抗議集会で、山口二郎法政大教授は安倍晋三首相に対し「お前は人間じゃない」との暴言を吐いた。時代劇の決めぜりふからの借用らしいが、現代の人権感覚からすれば、それは明らかに、安倍晋三という一個人に対する言葉の暴力である。

 反安保法案運動が始まって以来、映画監督の宮崎駿氏は安倍首相のことを「愚劣」と罵倒し、日本学術会議前会長で専修大教授の広渡清吾氏は7月末に安倍首相のことについて「バカか嘘つきか」と二者択一の手法でののしった。そして学生団体「SEALDs(シールズ)」の中核メンバーの奥田愛基氏に至っては、8月の連合主催の国会前での安保集会で「バカか、お前は」と罵声を安倍首相に堂々と浴びせた。


言葉の暴力平気な人間は平和を語る資格なし

 こうした中で反安保法案運動はそのしかるべき趣旨から逸脱して理性と節度を失い、単なる安倍首相に対する「怨念の個人攻撃」へと変質した。このような「平和運動」はもはやその名に値しない。言葉の暴力を平気で振るうような人間たちに、「平和」を語る資格はどこにあるのか。

 さらに問題なのは、前述のような発言に対し、反安保法案運動の陣営から内部批判も自己反省もいっさい聞こえてこないことだ。日本の「保守」とは対極の「リベラル」を代表するような新聞などもそれをいっさい問題視していない。このような異様な事態はむしろ、日本のリベラル全体において基本的な人権感覚がまひしていることを示している。言葉の暴力を容認するような「リベラル」はリベラリズムと言えるのか。

 奥田氏や山口氏の暴言が吐かれたその日、そしてそれを容認してしまった時、日本の「リベラル」はすでに死んだ。


誇りないのか

 今から26年前、私の世代の多くの中国人青年が北京の天安門広場でそれこそ命がけの民主化運動を展開した。しかしわれわれは、本物の独裁者のトウ(登におおざと)小平に対しても「お前は人間じゃない」といった暴言を吐いたことはない。われわれはただ、民主化の理念を訴えただけだった。だから、民主化運動がトウ小平の解放軍に鎮圧されたとしても、われわれには誇りが残った。

 民主主義社会の中で「鎮圧」される心配のない日本の反安保法案運動に参加している皆さんも、このような誇りを持ってしかるべきではないだろうか。

「【安保法制】静止振り切り鉄柵『決壊』、車道に流れ込む群衆… 混乱する現場、警備からは悲痛な声」(産経新聞
 → http://www.sankei.com/affairs/news/150831/afr1508310012-n1.html
「【安保法制】国会前集会発言集(1)『安倍は人間じゃない。たたき斬ってやる』山口二郎法政大教授」(産経新聞
 → http://www.sankei.com/politics/news/150831/plt1508310040-n1.html
「【安保法制】国会前集会発言集(2)『安倍は首相をやめろ」シールズ・奥田氏』(産経新聞
 → http://www.sankei.com/politics/news/150831/plt1508310041-n1.html
「【安保法制】国会前集会発言集(3)『この集会はフランス革命坂本龍一氏』(産経新聞
 → http://www.sankei.com/politics/news/150831/plt1508310042-n1.html


フランス革命...?
正義の名の下に、一時の感情に流された民衆が暴徒化する。
革命とは、過去の遺産、我々の祖先が何十年、何百年もかけて試行錯誤を繰り返し積み上げ築き上げてきた伝統・文化を、一瞬にして破壊してしまう暴挙である。
イスラム国やタリバンのそれと何ら変わらない。

そのフランス革命を当初から批判し続けたのが英国の哲人「保守の父」エドマンド・バークである。

深慮、熟考、先見の明などが百年もかかって建設できる以上のものを、怒りと逆上ならば僅か半時間で引き倒す。

── エドマンド・バーク(『フランス革命の省察』)

一国の首相を呼び捨てにして“たたき斬る”だの、“革命”だの、汚い言葉で罵り、怒号が飛び交う。
穏やかでない。
“平和主義者”が戦争を起こす所以である。


新戦争論―“平和主義者”が戦争を起こす (1981年) (カッパ・ビジネス)

新戦争論―“平和主義者”が戦争を起こす (1981年) (カッパ・ビジネス)