誰も彼もが他人の頭で考へてゐる。
戦後70年。どのチャンネルのどの番組も、どの解説者もコメンテーターも同じ言葉の繰り返し。
周りの人間まで、テレビと同じ事を言う始末。
唯一救いは、先日の特番での脳科学者、中野信子女史の発言。
「人間は戦争をする生き物です。その前提で物事を考えないと全てを間違う」と。
日本中が、挙(こぞ)つて集団思考のわなに陥つてゐるではないか。上は如何にして世界に平和を齎(もたら)すべきかといふやうな大問題から、下は処世術や金の儲け方に至るまで、誰も彼もが他人の頭で考へてゐる。あすにも日銀に回収されさうな手垢のついた古紙幣にも似た合言葉で考へてゐる。が、恐ろしいのは、今日だけしか、そしてある集団にだけしか通じない思考法が、詰り自分の頭では何も考へなくても済む思考法が、やがて日本中を支配してしまふだらうといふ事だ。いや、もうさうなつてゐるのではないか。その証拠に言論はますます盛んである。
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