NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

Saint-Exupéry

「【産経抄】天から落ちてきた 7月28日」(産經新聞
 → http://www.sankei.com/column/news/150728/clm1507280004-n1.html

 「『なんだって! きみ、天から落ちてきたんだね?』『そうだよ』と、ぼくは、しおらしい顔をしていいました。『へええ! へんだなあ、そりゃ…』」(『星の王子さま内藤濯(あろう)訳、岩波少年文庫)。

 アフリカのサハラ砂漠に不時着した飛行士と王子さまが、不思議な会話を重ねながら友情を育てていく。フランス童話の名作は、世界中で愛されてきた。作者のサンテグジュペリは、パイロットとしても活躍した。

 1935年に自家用機でパリからサイゴンに向かう途中、リビア砂漠で遭難した。3日間さまよい歩いた経験が、作品に生かされた。現在の飛行機の性能は、当時とは比べものにならないほど向上し、事故は激減している。それでも、ゼロにはならない。

 日曜日の朝、東京・調布飛行場を飛び立ったばかりの5人乗りの小型プロペラ機が墜落したのは、砂漠ではなかった。多くの住民が、休日の昼前の時間をのんびり過ごしていたはずの、住宅密集地である。乗っていた男性2人と、小型機が突っ込んで炎上した家にいた女性の命が失われた。

 サンテグジュペリは、第二次大戦中の44年7月、地中海のコルシカ島から偵察飛行に出たまま、消息を絶った。その死の謎が明らかになったのは、60年後の2004年である。フランス南部マルセイユ沖から引き揚げられた残骸が、搭乗機だったことが確認された。その後、撃墜したドイツ空軍の元パイロットも、名乗り出ている。サンテグジュペリの作品の、愛読者だったという。

 亡くなった女性は、今月引っ越してきたばかりだった。理不尽な死を招いたのは、小型機のエンジントラブルか、操縦士のミスなのか。それとも、連日の猛暑が関係しているのだろうか。


『人間の土地』

 あのともしびの一つ一つは、見わたすかぎり一面の闇の大海原の中にも、なお人間の心という奇蹟が存在することを示していた。あの一軒では、読書をしたり、思索したり、打明け話をしたり、この一軒では、空間の計測を試みたり、アンドロメダ星雲に関する計算に没頭したりしているかもしれなかった。またかしこの家で、人は愛しているかもしれなかった。それぞれの糧を求めて、それらのともしびは、山野のあいだに、ぽつりぽつりと光っていた。中には、詩人の、教師の、大工さんのともしびと思(おぼ)しい、いともつつましやかなのも認められた。しかしまた他方、これらの生きた星々のあいだにまじって、閉ざされた窓々、消えた星々、眠る人々がなんとおびただしく存在することだろう・・・。
 努めなければならないのは、自分を完成することだ。試みなければならないのは、山野のあいだに、ぽつりぽつりと光っているあのともしびたちと、心を通じ合うことだ。

── サン=テグジュペリ(『『人間の土地』』)

星の王子さま公式ホームページ』 http://www.lepetitprince.co.jp/
『Site officiel Saint Exupery』 http://www.saint-exupery.org/