NAKAMOTO PERSONAL

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竹光では守れない

 新聞はあくまで事実の報道という形で、国民を一定の方向に追いやることができますが、さらにその限度を超えて、最初から「世論はこうだ、こうだ」と国民の頭上におっかぶせていくとなると問題です。ことに一般の国民は難解拙劣な政治記事を読まずに、見出しや煽情的な社会面を読みがちですから、そういう工作は易々たるものです。もちろん、国民の大部分は動かされはしませんでした。

── 福田恆存『輿論を強ひる新聞』


道内にいて、北海道新聞をはじめとする連日の安保法案、安倍政権を指弾する報道に触れていると、それが世論の総意のように思えていたが、そうでもない。


「【産経抄】竹光では守れない 7月16日」(産經新聞
 → http://www.sankei.com/column/news/150716/clm1507160004-n2.html

 海坂藩の下級武士の清兵衛は、上意討ちの討っ手として、一刀流の使い手、善右衛門の屋敷に乗り込んだ。しかし、相手に戦う意思はない。そのうちなぜか、お互いの亡妻の思い出話になる。

 心を許した清兵衛がつい、葬式代に困って刀を売り、竹光(たけみつ)であることを明かした。次の瞬間、善右衛門が豹変(ひょうへん)し、刀を抜いて清兵衛に襲いかかる。山田洋次監督『たそがれ清兵衛』の映画史に残る、決闘シーンである。

 衆院平和安全法制特別委員会は昨日、安全保障関連法案の採決を行い、与党の賛成多数で可決した。一部の夕刊には、抗議の意味を込めて、「採決強行」の見出しが躍っていた。今日の朝刊にも、「戦争への道が開かれた」などと、読者の恐怖心をあおる記事が載っているだろう。

 小欄は、法案可決を断固支持する。日本にとって、最大の軍事的脅威である中国に、鞘から刀を抜かせてはならない。つまり、抑止力を強化するためには、集団的自衛権の行使を可能にする法律が絶対に必要だからだ。

 確かに国民の間で、法案への理解が進んでいるとはとてもいえない。安倍晋三首相も認めている。ただそれは、「徴兵制」や「憲法論」など、野党が意図的に論点を横道にそらせて、議論を紛糾させてきたからだ。

 政府与党側も、中国を刺激するのを恐れて、脅威の実態を国民に伝えてこなかったきらいがある。中国が東シナ海日中中間線付近で、軍事転用が可能なガス田の海洋プラットホームを拡大している事実も、なぜか伏せられてきた。

 左寄りの人が多い、テレビのコメンテーターの発言や世論調査の結果から、改めて思い知る。憲法9条という名の竹光が日本を守ってきたと、本気で信じている人が、まだ相当数いるらしい。

「【主張】安保法制 与党の単独可決は妥当だ」(産經新聞
 → http://www.sankei.com/column/news/150716/clm1507160003-n1.html
「【主張】安保法衆院通過 日本の守り向上へ前進だ 国民の理解深める努力尽くせ」(産經新聞
 → http://www.sankei.com/column/news/150717/clm1507170002-n1.html
「【社説】安保法案参院へ 日本の平和確保に重要な前進」(読売新聞)
 → http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20150717-OYT1T50001.html
「【社説】安保法案可決 首相は丁寧な説明を継続せよ」(読売新聞)
 → http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20150715-OYT1T50124.html