草むしり
「雑草なんて名前の草なんか無いんだ」
「それぞれ名前があって生きているんだ」
自答しながらシロツメクサやらスギノコやらタンポポやら“雑草たち”を罪悪感にさいなまれつつ、独り庭の草むしり。
雑草の自分を鑑みる。
寅彦先生にも曰く、
雑草をむしりながら、よくよく見ていると、稲に似たのや、麦に似たのや、また粟あわに似たのや、いろいろの穀物に似たのがいくつも見つかる。
おそらくそれらの五穀と同じ先祖から出た同族であろうと想像される。
それが、自然の環境の影響や、偶然の変移や、その後の培養の結果で、現在のような分化を来たしたものであろう。
これらの雑草に、十分の肥料を与えて、だんだんに培養して行ったら、永い年月の間には、それらの子孫の内から、あるいは現在の五穀にまさる良いものが生まれるという可能性がありはしないか。
人間の種族についてもあるいは同じことが言われはしないか。
- 作者: 寺田寅彦
- 出版社/メーカー: 岩波書店
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