NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

第4の権力

産経抄より。


「【産経抄】7月4日」(産経新聞
 → http://www.sankei.com/column/news/150704/clm1507040003-n1.html

 まるで蜂の巣をつついたような騒ぎである。自民党の私的勉強会で報道機関に圧力をかけるべきだとの意見が出た問題で、名指しされた沖縄の地元紙2紙の編集局長が2日に記者会見を開いた。琉球新報の潮平芳和氏は「2紙だけの問題ではなく全メディア、言論の自由への挑戦だ」と訴えた。

 なるほど民主主義の根幹をなす表現、言論の自由は大切なものであり、勉強会での若手議員らの発言は軽率のそしりを免れない。そうではあるが、一連の新聞やテレビの興奮ぶりにはどこか割り切れない気分が残る。

 平成19年に、沖縄県沖縄戦集団自決に関する取材をした際の話だ。匿名を条件に取材に応じた県議は、この件で地元紙の論調と違う意見を表明したところ、地元紙記者から「また同じようなことを言ったらあなたをつぶす」と脅かされたと証言した。政治生命を抹殺される恐怖を覚えたという。

 かつて朝日新聞に、NHKの慰安婦番組に「介入した」と身に覚えのないことを書かれた安倍晋三首相も、雑誌『諸君』(17年12月号)でこう述べている。「与党の政治家でも、大新聞と闘う、事を構えるというのは大変なプレッシャーです。(中略)多くの政治家がたじろぎ、すり寄ることに終始してしまう」。

 メディアの重要な仕事の一つは権力の監視である。だが、メディアと政治家の関係は、政治家イコール強者とはかぎらない。行政・立法・司法の三権になぞらえて「第4の権力」と呼ばれるメディアに暴走の恐れはないか。

 自民党伊吹文明衆院議長は、2日の派閥会合で与党議員の立ち居振る舞いを厳に戒めつつ、メディア側に「お互いに権力の行使は抑制的でなければならない」と呼びかけた。真摯(しんし)に耳を傾けたい。

翁に曰く、

テレビは巨大なジャーナリズムで、それには当然モラルがある。私はそれを「茶の間の正義」と呼んでいる。眉ツバものの、うさん臭い正義のことである。

── 山本夏彦『何用あって月世界へ』