一日一言「思い立った日が吉日」
七月一日 思い立った日が吉日
今年もはや半ばを過ぎて、失敗したことが多かったことを反省するが、あとの半年は、これを取り返さなければならない。そのためにはすぐ実行することを心がけなければならない。善いことや正しい道と知ったならば、すぐにその方針に向かって進むことである。貯蓄が必要だと思ったなら、すぐにその日のうちに一銭の貯金をしなさい。また、学問が大事だと思ったら、その日のうちに本を一ページでいいから読みなさい。
東路と言へば遠きに似たれども
ただ一と足の踏み出しにあり
千里ゆく道も初は一と歩み
低きよりして高く登りつ
今年も人生も折り返しを越え、後が無くなってきた。
自分といふ人間は他にかけがへのない人間であり、死ねばなくなる人間なのだから、自分の人生を精いつぱい、より良く、工夫をこらして生きなければならぬ。人間一般、永遠なる人間、そんなものゝ肖像によつて間に合はせたり、まぎらしたりはできないもので、単純明快、より良く生きるほかに、何物もありやしない。
文学も思想も宗教も文化一般、根はそれだけのものであり、人生の主題眼目は常にたゞ自分が生きるといふことだけだ。
良く見える目、そして良く人間が見え、見えすぎたといふ兼好法師はどんな人間を見たといふのだ。自分といふ人間が見えなければ、人間がどんなに見えすぎたつて何も見てゐやしないのだ。自分の人生への理想と悲願と努力といふものが見えなければ。
- 作者: 坂口安吾,川村湊
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1996/07/10
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