NAKAMOTO PERSONAL

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慰安婦報道検証

山本夏彦翁、18年前のコラムより。
朝日新聞はもとより、多くのメディアは無視し続けてきた。

 SAPIOサピオ)10月9日号が注目すべき発言をしているから見よと言われたから、遅ればせながら見た。これまで朝日新聞南京大虐殺はあったと書き、産経新聞はなかったと書いて対立していた。サピオはこの号で朝鮮人慰安婦の強制連行はあった(朝日)なかった(産経)に限って両紙に問うてその回答を並べていた。
 このなん十年大新聞は週刊誌の新聞批判についぞ答えたことがない。同じ土俵にあがったら大新聞はソンだからであるが、今回は正式な質問だから答えないわけにはいかない。
 南京大虐殺はあったというなら朝日は証拠をあげなければならない。強制連行にもあげなければならない。両紙に対するサピオの質問は?から?までの公開状である。産経はその一々に旧号の記事をダイジェストして答えている。たとえば韓国済州島で「自ら慰安婦狩りをした」と称する吉田清治証言なるものは全くのでたらめであると秦郁彦千葉大教授は現地まで出向いて確かめている。
 平成八年四月の国連人権委員会でのクマラスワミ報告はこの吉田発言まで証拠の一つにあげている程度の代物で、委員会はテークノート(聞きおく)といって問題にしなかったものを朝日は「人権委が慰安婦決議を採択した」と訳して見出しにした。故意か偶然か誤りだと産経は論じているのに朝日は答えていない。
「これまで朝日新聞の紙面で掲載している通りですので、ご覧いただきます」と判で押したように言うのみである。だれが半年一年十年前の紙面を見るだろう。第一何月何日付の紙面か書いていない。
 くだくだしいからこれ以上あげないが、一方が当時の紙面を証拠として手短にあげているのに、一方があげないで参照せよの一点張なのは誰の目にも不利である                                。
 昭和二十五年の朝鮮戦争は、はじめ韓国が攻め込んだから始まったと北朝鮮はいまだに言っている。北朝鮮の子供の教科書にはそう書いてある。世界はそれを信じるものと信じないものの二つに別れたのである。強制連行はあったものと、なかったものに別れたのである。前回にも書いたが、いくら証拠をあげてもムダなのである。今は証拠よりも論の時代なのである。もう言わないつもりだったが、ここにまあ一大事が生じた。
 わが国の教科書の執筆者はインテリである。インテリなら朝日の読者で、朝日はなが年日教組の味方で、そして今は日教組育ちが大小の企業のデスクにいる。教科書会社も例外ではない。かくて日教組の申し子がさらなる申し子を育てようと、強制連行も大虐殺もあったと歴史の教科書に書いて、それを文部省のデスクが承認して次代の少年少女に教えつつあるのである。
 週刊誌の使命の一つは新聞をチェックするにある。戦前朝日は読者をミスリードして国を過った。今回もまた過る。これをきっかけに週刊誌は結束して朝日を包囲して応答するまで問うてはどうか。
(平成八年十一月十四日号)

── 山本夏彦(『死ぬの大好き』)

死ぬの大好き

死ぬの大好き


「【朝日慰安婦報道検証会見・詳報】(1)一連の検証報道『自己防衛的な側面強い。果たして読者のための紙面なのか』 朝日の姿勢に厳しい提言」(産経新聞
 → http://www.sankei.com/affairs/news/141222/afr1412220033-n1.html
「【朝日慰安婦報道検証会見・詳報】(2)慰安婦問題の海外への波及 『朝日新聞が主導的役割果たした』」(産経新聞
 → http://www.sankei.com/affairs/news/141222/afr1412220038-n1.html
「【朝日慰安婦報道検証会見・詳報】(3)『自分の価値判断をつけて読者を方向付けすることに驚き』 朝日の体質に疑問呈する」(産経新聞
 → http://www.sankei.com/affairs/news/141222/afr1412220039-n1.html
「【朝日慰安婦報道検証会見・詳報】(4)『どんな指摘受けても変えようとしない体質を批判した』 朝日へ改革促す」(産経新聞
 → http://www.sankei.com/affairs/news/141222/afr1412220040-n1.html
「【朝日慰安婦報道検証会見・詳報】(5)完 食い違う朝日と第三者委の“池上問題”に関する認識 社長の虚偽発言『真摯に受け止める』」(産経新聞
 → http://www.sankei.com/affairs/news/141222/afr1412220041-n1.html


「誤報認めた朝日特集記事『上から見下ろすよう』」(読売新聞)
 → http://www.yomiuri.co.jp/national/20141222-OYT1T50137.html
「朝日慰安婦検証:『自己弁護が目立つ』第三者委報告書」(毎日新聞
 → http://mainichi.jp/select/news/20141223k0000m040019000c.html
慰安婦検証記事『謝罪なし』、池上コラム『不掲載』 いずれも木村・朝日前社長の意向だった」(J-CASTニュース
 → http://www.j-cast.com/2014/12/22223996.html?p=all


慰安婦報道検証 第三者委員会」(朝日新聞
 → http://www.asahi.com/shimbun/3rd/3rd.html