三島と福田
三島続き。
私は三島に「福田さんは暗渠(あんきょ)で西洋に通じてゐるでせう」と、まるで不義密通を質すかのやうな調子で極め付けられたことがある。・・・・どう考へても三島はそれを良い意味で言つたのではなく、未だに西洋の亡霊と縁を切れずにゐる男といふ意味合ひで言つたのに相違ない。それに対してどう答へたか、それも全く記憶にないが、私には三島の「国粋主義」こそ、彼の譬喩(ひゆ)を借りれば、「暗渠で日本に通じてゐる」としか思へない。ここは「批評」の場ではないので、詳しくは論じないが、文化は人の生き方のうちにおのづから現れるものであり、生きて動いてゐるものであつて、囲いを施して守らなければならないものではない、人はよく文化と文化遺産とを混同する。私たちは具体的に「能」を守るとか、「朱鷺」を守るとか、さういふことは言へても、一般的に「文化」を守るとは言へぬはずである。
── 福田恆存(「覚書」一九八八年一月)『福田恆存 思想の〈かたち〉』
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“左”の朝日もひどければ、対峙・反発するヘイトスピーチの“右”の輩もひどい。
左翼と右翼の対峙が顕著化する昨今。
日本はなぜ西洋と優劣を競はねばならないのか。日本人が日本を愛するのは、日本が他国より秀れてをり正しい道を歩んで来たからではない。それは日本の歴史やその民族性が日本人にとつて宿命だからである。
人々が愛国心の復活を願ふならば、その基は宿命感に求めるべきであつて、優劣を問題にすべきではない。日本は西洋より優れてゐると説く愛国的啓蒙家は、その逆を説いて来た売国的啓蒙家と少しも変わりはしない。その根底には西洋に対する劣等感がある。といふのは、両者ともに西洋といふ物差しによつて日本を評価しようとしてゐるのであり、西洋を物差しにする事によつて西洋を絶対化してゐるからである。
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