NAKAMOTO PERSONAL

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「重力波」初観測

「宇宙誕生にさかのぼる重力波を発見、ビッグバン理論を補強」(ウォール・ストリート・ジャーナル)
 → http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304471904579446791454014668.html

 米国の大学などの研究チームは17日、約140億年前の宇宙の誕生にさかのぼる最も初期のシグナルである重力波を検出したと発表した。宇宙の誕生に関するビッグバン理論を補強するものだ。

 研究チームは、南極点にある電波望遠鏡を使って、今日宇宙に残されている原始的マイクロ波放射の中に重力波の自然的パターンを発見したと述べた。科学者たちは、この放射をビッグバンのかすかな名残りとみなしている。

 科学者たちは、今回の発見は宇宙創生に関する最初の直接的データを提供していると述べた。

 この発見が正しいと判明すれば、それは、宇宙構造を圧縮したり伸張したりする重力波が宇宙誕生初期の拡張の瞬間、つまり「インフレーション」の瞬間に潤沢に生成されたことを示す、と幾人かの専門家は述べている。初期の拡張とは、宇宙が原子よりも小さいピンポイントから、今日みられる観測可能な宇宙にまで一気に拡張した瞬間の現象とされる。この理論は現代の宇宙論の要(かなめ)となっている。

 重力波はまた、アインシュタイン一般相対性理論でその存在を予言していた。研究者たちは長年にわたってこの重力波の証拠をつかもうと努力しており、それがやっと発見された、と科学者たちは述べている。

 米カリフォルニア大学の宇宙理論専門家アンドレアス・アルブレヒト氏は「これは信じがたいほどに劇的な成果だ」と述べ、「あらゆる研究者に衝撃を与える」と語った。同氏はこの研究チームに参加していない。

 ビッグバン理論とはライバル関係にある理論では、宇宙は膨張しているのではなく、際限のない自律的な循環(サイクル)の一環として創造されたと考えられている。今回の重力波発見が真実ならば、「こうした循環モデルは死んだことになる」とカナダの理論物理学ペリメーター研究所のニール・トゥロック所長は言う。同所長は循環モデルを支持している。

 今回の発見については宇宙理論の妥当性をめぐる影響などが極めて大きい。このため、ビッグバン理論陣営の科学者もサイクル宇宙理論陣営の科学者も、この発見を確認できるかどうか新データを精査するだろう。

 研究チームは、ハーバード・スミソニアン宇宙物理学センターで行われた記者会見と、「宇宙物理学ジャーナル」に提出した2つの論文で、BICEP2実験から得られた重力波発見の結果を発表した。BICEPとはBackground Imaging of Cosmic Extragalactic Polarizationの略で、南極点の近くに設置された望遠鏡を使い、140億年前の宇宙初期に放出されたマイクロ波放射の偏光観測を行うプロジェクト。第2世代の望遠鏡をBICEP2という。同チームはまた、6年間の観測で収集した原始的重力波によるマイクロ波放射パターンの画像を公表した。

 米航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所で今回の研究の着想に貢献したカリフォルニア工科大学(CIT)の物理学者ジェームズ・ボック博士は「これは(初期宇宙の)インフレーションが起こった直接の証拠だ」と述べた。そして「ビッグバンの140億年後にわれわれが宇宙創造の最初の瞬間をのぞき、そこから何かを学べるというのは本当に素晴らしいことだ」と語った。

「宇宙膨張の決定的証拠を発見」(ナショナルジオグラフィック ニュース)
 → http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20140318005
「『重力波』提唱の佐藤さん 『データが得られるとは…』」(産経新聞
 → http://sankei.jp.msn.com/science/news/140318/scn14031815250006-n1.htm


 宇宙の年齢が六千年から一万二千年の間ではなく、八十億から百五十億年の間だとわかれば、宇宙の壮大さを改めて思い知らされるだろう。人間は神の創造物ではなく、原子で出来た複雑な組織だと認めれば、ともかくも原子に対する敬意が深まるのではないだろうか。今ではこの地球も、銀河系にある何十億もの惑星系の中の一つの惑星にすぎないことがわかっている。さらに宇宙には、銀河系以外にも何十億もの銀河がある。そうだとすれば、可能性は途方もなく広がるではないか。自分たちの祖先がサルの祖先でもあるとわかれば、ほかの生物との結びつきに目覚め、人類の本性についても考えが深まるだろう。――たとえそれが、あまり嬉しくない性質だったとしても。

── カール・セーガン『カール・セーガン 科学と悪霊を語る』