NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

『人間は生きることが、全部である。』

「昨年の学生・生徒自殺1000人突破 『就職失敗』理由急増」(産経新聞)
 → http://sankei.jp.msn.com/life/news/120608/bdy12060823330006-n1.htm

 平成23年の自殺者は3万651人と、10年以来初めて3万1千人を下回ったが、一方で就職活動の失敗を苦に10〜20代の若者が自殺するケースが目立っていることが8日、政府が公表した24年版「自殺対策白書」で明らかになった。

 白書によると、23年の大学生などの自殺は、前年比101人増の1029人で、調査を開始した昭和53年以来初めて千人を突破した。内閣府は「雇用情勢の悪化」を一因に挙げている。警察庁の統計では、「就職失敗」による10〜20代の自殺者数は平成19年の60人から23年は150人にまで増加している。

 大学新卒者の就職率(4月1日現在)は過去最低だった23年の91・0%から24年は93・6%と4年ぶりに上昇したが「改善とまではいえない。実際に80社以上申し込んでも内定が得られないという学生もいる」(大学関係者)。

 全国自死遺族総合支援センターの杉本脩子代表は「何度も落ちることで次第に追い込まれ、『自分には価値がないのではないか』と孤立感を深めていくのでは」と分析する。

 このため心のケアに力を入れる大学も増えている。

 千葉県内の私立大の就職課は、リクルートスーツ姿の学生が目立ち始める1〜4月、学生らの「表情」を気にし始めるという。「学生が企業と接触し始めるのがこの時期。厳しい質問に面食らい、ふさぎこむ学生も多いので積極的に声をかけて励ましている」(担当者)。都内の中堅大学では昨年から就職部のスタッフらが4年生全員と面談を実施。「マイナス思考になりがちな学生には、違った見方もあることを伝え、気持ちが前向きになるよう丁寧にアドバイスをしていく」という。

 厚生労働省も全国57カ所の「新卒応援ハローワーク」で、内定のないまま卒業した学生のケアを行っている。同省は「顔を見せなくなれば、電話やメールで就職活動再開を促している。学生に寄り添う型の支援がますます重要になってくる」としている。

我が聖典、安吾に曰く、

 死ぬ、とか、自殺、とか、くだらぬことだ。負けたから、死ぬのである。勝てば、死にはせぬ。死の勝利、そんなバカな論理を信じるのは、オタスケじいさんの虫きりを信じるよりも阿呆らしい。
 人間は生きることが、全部である。死ねば、なくなる。名声だの、芸術は長し、バカバカしい。私は、ユーレイはキライだよ。死んでも、生きてるなんて、そんなユーレイはキライだよ。
 生きることだけが、大事である、ということ。たったこれだけのことが、わかっていない。本当は、分るとか、分らんという問題じゃない。生きるか、死ぬか、二つしか、ありやせぬ。おまけに、死ぬ方は、たゞなくなるだけで、何もないだけのことじゃないか。生きてみせ、やりぬいてみせ、戦いぬいてみなければならぬ。いつでも、死ねる。そんな、つまらんことをやるな。いつでも出来ることなんか、やるもんじゃないよ。
 死ぬ時は、たゞ無に帰するのみであるという、このツツマシイ人間のまことの義務に忠実でなければならぬ。私は、これを、人間の義務とみるのである。生きているだけが、人間で、あとは、たゞ白骨、否、無である。そして、ただ、生きることのみを知ることによって、正義、真実が、生れる。生と死を論ずる宗教だの哲学などに、正義も、真理もありはせぬ。あれは、オモチャだ。
 然し、生きていると、疲れるね。かく言う私も、時に、無に帰そうと思う時が、あるですよ。戦いぬく、言うは易く、疲れるね。然し、度胸は、きめている。是が非でも、生きる時間を、生きぬくよ。そして、戦うよ。決して、負けぬ。負けぬとは、戦う、ということです。それ以外に、勝負など、ありやせぬ。戦っていれば、負けないのです。決して、勝てないのです。人間は、決して、勝ちません。たゞ、負けないのだ。

── 坂口安吾不良少年とキリスト


教祖の文学・不良少年とキリスト (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ)

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