NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

人間は自分が善人だと思った時、始末が悪くなる

曾野綾子さんの『自分をまげない勇気と信念のことば』より。

 アフリカの飢餓の問題は、私たちの心を試すのに、いい題材である。
 人のお手助けをしようと思うことは、署名運動ではない。署名だけして、いい人になったと思うことくらい、私は嫌なことはない。それでもしないよりはいいでしょう、という人がいるが、私はしないより悪いと思っている。なぜなら、しなかった人は自分が人道的ではない人間なのだろうという、引け目を感じているが、署名した人は、自分が充分にヒューマスティックだと思い込むからである。人間は自分が善人だと思った時、始末が悪くなる。
 人を助けるなどということは、本来不可能なことなのだが、それでも一人の目の前にいる人がほんの少しでも、幸せになることができれば、という程度のことであるのである。そのためには、最低限、心か、労力か、お金か、いずれかを出さねばならない。そのうち、一番楽なのは、自分で出せる範囲のお金なのである。

── 曾野綾子(『あとは野となれ』)


自分をまげない勇気と信念のことば (WAC BUNKO)

自分をまげない勇気と信念のことば (WAC BUNKO)





翁にも曰く、

 理解をさまたげるものの一つに、正義がある。良いことをしている自覚のある人は、他人もすこしは手伝ってくれてもいいと思いがちである。だから、手伝えないと言われるとむっとする。むっとしたら、もうあとの言葉は耳にはいらない。

── 山本夏彦(『何用あって月世界へ』)