NAKAMOTO PERSONAL

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『藤沢周平記念館』

「山形県鶴岡市立 藤沢周平記念館が29日オープン 」(産経新聞)
 → http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/100427/acd1004270810004-n1.htm

「海坂藩」に思いをはせるひととき
 「海坂(うなさか)藩」。作家、藤沢周平さん(昭和2年〜平成9年)の小説には、この北国の架空の小藩がよく登場する。モデルの舞台は、藤沢さんが生まれ育った山形県鶴岡市。その郷里に、鶴岡市藤沢周平記念館が29日、オープンする。江戸時代の市井の人々や武士の生き方、庄内地方の歴史や自然を背景にした時代小説の数々…。「藤沢文学」の原点と作品世界が存分に味わえる文学館だ。(堀晃和)
 日本海に面した鶴岡は、庄内藩の城下があった街。記念館は、鶴ケ岡城本丸御殿があった鶴岡公園に建設された。藤沢さんが子供のころ通った図書館が建っていた縁の深い場所という。
 雪国の春は遅い。開館直前に訪れたときは、ちょうど公園内の桜が見ごろを迎えていた。
 2階建ての館内は、3部構成の常設展示に企画展示を加えた内容。約850点が展示され、約3800点が収蔵されている。入ってすぐの第1部では、「『藤沢文学』と鶴岡・庄内」と題し、故郷の情景が書き込まれた『蝉しぐれ』『春秋山伏記』『三屋清左衛門残日録』の3作が、庄内地方の風景を撮ったスライドショーで紹介されている。日本海の夕景や雪景色、街のたたずまい…。計11のモニター画面に、100枚以上の写真が散策するような間隔でゆっくりと映し出されていく。五十嵐和彦館長は「写真を見ながら作品のイメージをふくらませていただければ」とねらいを語る。故郷との結びつきを強く意識した構成だ。
 第2部の「『藤沢文学』のすべて」は、ファンにも特に貴重な内容だろう。直筆原稿や創作メモの紹介に加え、東京・大泉学園町の自宅2階の書斎を移築。昭和51年11月から藤沢さんが亡くなるまでの約20年間、執筆した部屋が忠実に再現されている。

 平成15年に自宅が解体された際、鶴岡市で書斎の天井や梁(はり)、畳など建材のすべてを保存。机や椅子(いす)、本棚などの調度品は遺族が保管していたものを借り受けた。スペースの都合で、実際の6畳間が4畳半になってはいるが、「書斎の写真を参考に、本棚の本の順番まで同じにした」(同館主任の奥山真裕さん)というこだわりのコーナーだ。
 第3部「『作家・藤沢周平』の軌跡」では、中学教師や業界紙の記者時代、家族の写真、カメラなどの遺品や年表などを通じて作家の生涯に迫っている。
 11月28日までの企画展示は、海坂藩が舞台の代表作『蝉しぐれ』に焦点を当てた。ラスト部分の直筆原稿など興味深い展示物が並んでいるが、「海坂藩・城下図」で、しばし足が止まってしまった。藤沢さんと親交が深く、今月亡くなった作家の井上ひさしさんの手製という。城下の様子が解説とともに詳しく描かれており、眺めていると、イメージがふくらんで楽しい気持ちになってくる。
 藤沢さんが亡くなって13年。没後から作品の映画化が進み、今年は、公開中の「花のあと」や7月10日公開の「必死剣鳥刺し」と海坂藩を舞台にした作品が相次ぐなど、ますます評価は高まっている。館のオープンで、その人気にますます拍車がかかりそうだ。


鶴岡市藤沢周平記念館』 http://www.city.tsuruoka.lg.jp/fujisawa_shuhei_memorial_museum/index.html