NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

正義と良心を売る人々

私は衣食に窮したら、何を売っても許されると思うものである。女なら淫売しても許される。ただ、正義と良心だけは売物にしてはいけない

─ 山本夏彦『何用あって月世界へ』



「失業者支援で思想宣伝をするな! 『派遣村』リポート(上)」(PJニュース.net)
 → http://news.livedoor.com/article/detail/3962551/

  年末からメディアでも話題になっている東京・日比谷公園の「年越し派遣村」。昨年始まった企業の大量解雇や派遣労働者への雇い止めで、仕事も家も失った人々が急増。彼らに宿泊場所、食料、衣類などを提供し、就職や生活保護に関する相談を受け付けるため、全国ユニオンが昨年12月31日に開設した。

 ところが、こうした支援活動について、インターネット上である問題が話題になっている。名古屋での同種の活動を報じた新聞写真に、憲法9条の改正に反対する趣旨の横断幕が写されていたのだ。失業問題に便乗した思想宣伝に対して批判の声があがり、「派遣村が9条信者布教の地に」といった表現も見られた。しかし問題にされた写真は名古屋市内の公園でのもの(CHUNICHI Web http://www.chunichi.co.jp/article/feature/koyou_houkai/list/200901/CK2009010102000141.html 参照)。日比谷公園の「派遣村」ではない。

 「派遣村」では、複数の労働組合などと一緒に、民主党の支持母体と言われる「連合」の関係者も支援を表明している。日本共産党からの支援物資も大量に届いていたが、少なくとも左翼の単独イベントではない、むしろ、この“有事”に組織の違いを乗り越えて行われた活動のように見える。そんな「派遣村」にも、思想宣伝に走る人間がいるのか。1月3日朝に足を運んでみると、様々な労組ののぼりが立てられていたが、憲法9条など失業問題と無関係の宣伝文は見当たらない。ほっとして、そのまま夕方まで活動の様子を取材した。

 ここでは、主催者によって非常に厳しい取材規制が敷かれている。取材申し込みをした上で腕章を着用した者でなければ、写真も映像も撮影できない。ボランティアも同様だ。撮影場所は限られ、人物の顔の撮影も禁止(撮影を了承した人への個別取材は別)。撮影中に何度もスタッフから「許可を撮っていますか」「顔を写さないで」と声をかけられ、いちいち撮影を中断させられる。海外のある映像カメラマンも、「ホームレスばかりかボランティアまで撮影不可なんて、海外の取材現場ではありえない。これでは取材にならない」と嘆く。

 実際、新聞・テレビの報道を見ると、人間の首から下か後姿の映像・写真ばかり。まるで後ろめたい人々の集団のように見えてしまう。50代男性の失業者は、「私は顔を撮影されても困らないし、一律に顔を撮るなというのは確かにおかしい。でも借金を抱えている人は、撮られたくないだろう」という。しかしここにいて驚くのは、「支援村」利用者の多くが、明日からでもすぐ働けそうに見えるほど物腰も顔つきもしっかりしていること。若者も少なくない。このこと自体が今回の大量失業の深刻さを示している。仕方ないこととは言え、それを写真や映像で伝えられないことが無念でならない。

 そして問題の思想宣伝だが、やはりいた。「9条改憲阻止!」のタスキをかけた男性が、ビデオカメラを片手に歩き回っているのだ。報道腕章や所属を明示するものは着けていない。明らかなルール違反。しかも、腕章をしている報道陣でさえいちいちスタッフから呼び止められるのに、記者が見た限り「9条改憲阻止!」男は誰にも呼び止められていない。これは“9条特権”なのか、それとも、みな気持ち悪がってかかわりあいになりたくないのか。それとも、すべてのボランティアに顔が知れているほどの「派遣村」幹部なのか?

 失業者支援は、関係者の思想を問わず、その活動自体に大きな意義がある。同様に、失業問題に便乗した思想宣伝行為は、その思想の内容を問わず愚かしく恥ずかしい。労組が一堂に会した「派遣村」だけに、なおのことそれに便乗した思想宣伝が見苦しく思えた。「派遣村」主催者は、報道陣を締め付けるなら、同様に“空気が読めない思想宣伝”も何とかしたらどうか。

故に、坂本政務官の言動にも理解出来るところがある。
煽っている輩が学生運動と同じ思想の持ち主「見苦しい思想宣伝を行う“憲法9条信者”」たちなのだから。
「『本当に働こうという人か』=派遣村で発言−坂本総務大臣政務官」(時事ドットコム
 → http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2009010500693

 坂本哲志総務大臣政務官は5日、総務省の仕事始め式で、仕事や住居を失った労働者らが宿泊していた日比谷公園(東京都千代田区)の「年越し派遣村」について、「本当にまじめに働こうとしている人たちが集まっているのかという気もした」と述べた。失業者を支援する市民団体などの反発を招きそうだ。
 同政務官は派遣村の活動について、「40年前の学生紛争の時に『学内を開放しろ』『学長出てこい』(などと学生らが要求した)、そういう戦略のようなものが垣間見える気がした」とも述べた。


「ホームレスを食い物にするキリスト教 『派遣村』リポート(下)」(PJニュース.net)
 → http://news.livedoor.com/article/detail/3964048/

  前回のつづき。年末からメディアでも話題になっている東京・日比谷公園の「年越し派遣村」に便乗して、見苦しい思想宣伝を行う“憲法9条信者”がいたことをリポートした。念のため付け加えておくと、記者は憲法9条改正に反対する考え自体を批判しているのではない。その主張を失業問題に便乗してアピールすることを「見苦しい」と考え、そんな見苦しい活動でさえ堂々とやってしまう狂信ぶりを「信者」と捉(とら)えているだけのことだ。

 さて、1月3日に「派遣村」で失業者たちと話している中で、“憲法9条教”ではなくホンモノの宗教であるキリスト教について、よろしくない噂(うわさ)を聞いた。東京にある複数の教会が、ホームレスを食い物にしているというのだ。Aさんが言う。

 「民間非営利団体(NPO)やボランティアには怪しいものがいっぱいある。でも、この派遣村の人たちは、本当にしっかりやってくれている。逆にキリスト教なんかひどいもんだよ。千代田区のビルの上階にある韓国系の教会で、ホームレスに部屋を食事を提供してくれると聞いて行ってみた。そしたら確かに部屋と食事にはありつけたんだけど、代わりに同じビルの1階にある焼肉店でタダ働きさせられるんだ」

 その場にいたほかのホームレスも、「その教会の噂を聞いたことがあるが、いまはもうそこに教会はない」という。

 「あの教会、なくなったのか! ざまあみろ!」

 Aさんは、とても嬉しそうだった。記者も、数年前に代表牧師が逮捕された韓国系キリスト教会について、「ホームレスを集めて生活保護を受けさせながらアルバイトをさせ、生活保護の給付金とアルバイト代を献金と称して教会に納めさせていた」という話を聞いたことがある。別のホームレスのBさんも、こんな話を聞かせてくれた。

 「杉並区の教会で飯を食わせてくれると聞いたので行ってみたら、クソ寒い季節なのに冷たい水の中に頭まで沈められた。しかも飯なんか食わせてくれない。教会に通いつづけて、5回水に浸(つ)かったら飯を食わせてやると言われたから、行くのやめたよ。その教会は韓国系じゃなくて、日本人がやっているようだった」

 記者はかつて、杉並区の教会について、よく似た話を聞いたことがある。「信者から勧誘され教会に行ってみたら、半ば強引に冷水のプールで洗礼を受けさせられてビックリした」というのだ。同じ教会かどうか確認は取れていないが、いずれにせよ、ホームレスを騙して洗礼を受けさせるとは、開いた口がふさがらない。

 さらに別のCさんも、怒りをあらわにする。

 「炊き出しだと言って教会にホームレスを集めて、飯を出すまで延々と賛美歌を歌わせる教会もある。実際に食事も出るんだけど、別に賛美歌なんか歌いたくないのに。ほかにも公園とかでホームレスを集めて集団にして教会に連れて行って、そこで説教を聞かせる教会もある。ホームレスに施しを与えなくても、集めて説教したり入信させたりするだけで、牧師の給料が上がるだか表彰があるだか、何かあるらしいんだ」

 もちろん、すべてのキリスト教会がホームレスを食い物にしているわけではないだろう。「派遣村」でも、ボランティアとして働くシスターの姿が見られた。信者獲得に直結しないような活動にも参加するクリスチャンは、ちゃんといる。しかし極端な少数派であるにせよ、東京都内だけで複数の教会の悪評が出てくることには、記者も驚かされた。前回の記事で、失業問題に便乗して思想宣伝をする“憲法9条信者”を批判したが、こうしたキリスト教会の方がよっぽど罪深いのではなかろうか。