NAKAMOTO PERSONAL

空にある星を一つ欲しいと思いませんか? 思わない? そんなら、君と話をしない。

「思へば遠く来たもんだ」

中原中也の友人あて書簡発見 『さびしい』と心境つづる」(産経新聞)
 → http://www.sankei.co.jp/news/050525/bun072.htm

 詩人、中原中也(なかはら・ちゅうや)(1907−37)が、友人で詩人の故高森文夫(たかもり・ふみお)氏に送ったはがき1通が、宮崎県東郷町の高森氏の実家から見つかった。同町の若山牧水記念文学館で6月2日から公開される。

 中也が高森氏にあてた書簡約60通は敗戦後、すべて紛失していたとみられていたが、高森氏がしおりとして本に挟んでいたものが見つかった。

 はがきは1935年4月17日付。中也の第一詩集「山羊の歌」が好評を博していた時期だが、東京の大学を卒業して郷里に帰った高森氏に「淋しい 誰に会っても余り面白くない」「君がゐなくなつて僕は全く淋しいことだ」と当時の心境を打ち明けている。

『牧水公園 若山牧水記念文学館』 http://www.gurunet-miyazaki.com/kankouti/kenhoku/bokukou/bokukou.html
中原中也記念館』 http://www.chuyakan.jp/




思へば遠く来たもんだ


十二の冬のあの夕べ


港の空に鳴り響いた


汽笛の湯気(ゆげ)は今いづこ


雲の間に月はゐて


それな汽笛を耳にすると


竦然(しようぜん)として身をすくめ


月はその時空にゐた


それから何年経つたことか


汽笛の湯気を茫然と


眼で追ひかなしくなつてゐた


あの頃の俺はいまいづこ


中原中也詩集 (新潮文庫)

中原中也詩集 (新潮文庫)