菜の花忌
司馬遼太郎は、けっして読者を萎縮させない。逆に、やさしく励まして、元気づける。面白く、興じて、談笑をさそう。陽気で、活発な、心おどりを生む。人の世の、むつかしさ、を描きながら、意気を消失させないのである。ハッパをかける、のではなく、慰撫して、医(いや)す、のである。いや、単に、医す、と言ったのでは当をえない。心の病気にならぬよう、あらかじめの治療をほどこすのである。すなわち、精神の衛生学、である。病に至らぬための、日常不断の手当である。まだ一般的ではないが、未病(みびょう)、という言葉がある。病に至らぬための工夫と手当を指す。病におちいってからでは遅い。医学の極意は未病であろう。司馬遼太郎の述作は、精神の未病学、とも言えようか。司馬遼太郎の作品を読みうること、それは、現代人のおおいなる幸福である、と私は信じる。
── 谷沢永一(『司馬遼太郎の贈りもの』)
今日は菜の花忌。
平成8年(1996年)2月12日、司馬遼太郎 没。
『司馬遼太郎記念館』 http://www.shibazaidan.or.jp/
歴史とはなんでしょう、と聞かれるとき、
「それは、大きな世界です。かつて存在した何億という人生がそこにつめこまれている世界なのです。」
と答えることにしている。
私には、幸い、この世にたくさんのすばらしい友人がいる。
歴史の中にもいる。そこには、この世では求めがたいほどにすばらしい人たちがいて、私の日常を、はげましたり、なぐさめたりしてくれているのである。
- 作者:司馬 遼太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/10/25
- メディア: 文庫
- 作者:司馬 遼太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1972/06/01
- メディア: 文庫
建国記念の日
「建国をしのび、国を愛する心を養う」建国記念の日。
かつて私は「建国記念の日」反対運動に反対した。お蔭で売物の保守反動を通り越し極右翼扱ひされるに至った。私が望んだのは「建国記念の日」などといふ「休日」ではなく、紀元節といふ「祝日」なのであり、これを突破口としての祝祭日の再検討と制定し直しなのである。戦後の「祝日」と称するものは殆どすべて「休日」に過ぎない。それだけの事なら、そんなものは全廃して毎週土日連休にした方が働くにも遊ぶにも遙かに効率が良い。
祝祭日が休日と違ふのは、それに儀式や行事が伴ひ、それを通して国民、或は集団が連帯感を確認する事にある。その点で多少とも「祝日」の名に値する戦後の「祝日」はメーデー一日あるのみと思ふが如何。「建国記念の日」は憂国といふ国民的連帯感の養成については、階級的連帯感の目醒めを促すメーデーに遠く及ばなかった。
日本人が日本を愛するのは、日本が他国より秀れてをり正しい道を歩んで来たからではない。それは日本の歴史やその民族性が日本人にとつて宿命だからである。
人々が愛国心の復活を願ふならば、その基は宿命感に求めるべきであつて、優劣を問題にすべきではない。日本は西洋より優れてゐると説く愛国的啓蒙家は、その逆を説いて来た売国的啓蒙家と少しも変わりはしない。その根底には西洋に対する劣等感がある。といふのは、両者ともに西洋といふ物差しによつて日本を評価しようとしてゐるのであり、西洋を物差しにする事によつて西洋を絶対化してゐるからである。
「かんじんなことは、目にみえない」
見えないものとか、
聞こえない声だとか、
あえて言ってないこととか、
うまく言えないままのこととか、
そういうことのほうが、
ずっと多いのだということを、
ぼくたちは忘れそうになる。
── 糸井重里(『小さいことばを歌う場所』)
小さな王子にも曰く、
「かんじんなことは、目に見えない」と王子さまは、忘れないようにくりかえしました。
一日一言「善と悪」
二月八日 善と悪
世の中のすべてのものは、人に宿ってその心となるが、ゆえに心は活物(いきもの)であって、常に生き生きとしている。心は一つの事象に感じて動くもので、これを意と言う。動くときは人の気持ちが主体となるがゆえに、善ともなれば悪ともなるのである。自然体で形にこだわらない思いやりを善と名づける。形にこだわって自然体ではない思惑が入ることを、悪と言う。それが私利私欲となる。
そことなくそよぐ難波の浦風に
よしあしのみやみだれそむらん <三輪執斎>
アンゴ先生、かく語りき。
すべて人間世界に於ては、物は在るのではなく、つくるものだ。私はそう信じています。だから私は現実に絶望しても、生きて行くことに絶望しない。本能は悲しいものですよ。どうすることも出来ない物、不変なもの、絶対のもの、身に負うたこの重さ、こんなイヤなものはないよ。だが、モラルも、感情も、これは人工的なものですよ。つくりうるものです。だから、人間の生活は、本能もひっくるめて、つくることが出来ます。
── 坂口安吾(『余はベンメイす』)
一日一言「善と悪」ラムラム忌
今日はラムラム王、ラムラム忌。
昭和58年(1983)2月7日 武井武雄 没
国立国会図書館デジタルコレクション より。
読めます!
『ラムラム王』 (近代デジタルライブラリー) http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1170079
『赤ノッポ青ノッポ』 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1168980
- 作者:アシェット婦人画報社 編
- 出版社/メーカー: アシェット婦人画報社
- 発売日: 2010/08/10
- メディア: 単行本
『武井武雄 - Wikipedia』 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%A6%E4%BA%95%E6%AD%A6%E9%9B%84
『イルフ童画館』 http://www.ilf.jp/
『銀貨社』 http://www.mars.dti.ne.jp/~ginka/
『コドモノクニ』(国立国会図書館国際子ども図書館) http://www.kodomo.go.jp/gallery/KODOMO_WEB/index_j.html
- 作者:武井 武雄
- 出版社/メーカー: 銀貨社
- 発売日: 1998/06/01
- メディア: 単行本